神椿市建設中。
VIRTUAL REALITY

発売日 2025/12/19
Meta Quest

INFORMATION

【インタビュー記事】ライターチーム様

2026.05.07
【前書き】

 『神椿市建設中。』シリーズ最大規模の物語となるVRアドベンチャーゲーム、『神椿市建設中。VIRTUAL REALITY』を手がけたクリエイターの方々から、本作を巡る様々な想いについて伺っていく本インタビュー。
 最終回となる今回は、ライターチームの吉崎 和氏、mizuki ryo氏のお二人からお話を伺うと共に、風雅宿も参加させていただいた。

 

 

◤◢◤ 自己紹介 ◢◤◢

 

――スタッフインタビュー最終回、今回はシナリオライターの皆さん(※)にお集まりいただきました。まずはご経歴や自己紹介の方から、皆さんお願いいたします。

※本来はサブライター兼企画補佐を務めた月島トラ氏もいらっしゃるのだが、今回は不参加となっている。

 

吉崎 和氏(以下、吉崎氏):
 吉崎 和と申します。もともとは企業所属のシナリオライター・ディレクターでしたが、現在はフリーランスとして、女性向けも男性向けなどいろいろ幅広くやらせていただいています。

 

mizuki ryo氏(以下、mizuki氏):
 mizuki ryoです。私はガラケー時代の2006年頃からゲームのシナリオライターとしてやってまして、2010年ぐらいはPCゲームとかのライターを結構していました。
 最近はアプリのお仕事とかも多いんですが、今回、月島さんにお声掛けいただいて参加することになりました。よろしくお願いします。

 

風雅宿(以下、風雅):
 風雅宿と申します。もともとはソーシャルゲームのプランナーをしていたんですが、現在はチーム月島の一員としてやらせていただいています。月島先生にお声がけいただいて、今作のシナリオに参加させていただきました。よろしくお願いいたします。

 

 

◤◢◤ 本作のシナリオ制作に参加された経緯 ◢◤◢

 

――本作のシナリオ制作にご参画いただいた経緯を、それぞれの視点からお話しいただければと思います。

 

吉崎氏:
 私は共通のお知り合いを経由してお声掛けいただいて、そこで初めて神椿市建設中。というコンテンツを知りました。今回初めてゲームになると知って大変面白そうだなと思い、「やらせてください」と手を挙げたんです。

 

――吉崎さんはもともとVRゲームにご興味がおありで、VRゲームユーザーとしても当時から色々とプレイされていたんですよね。

 

吉崎氏:
 そうですね。PlayStation VR、Meta Questも発売当初から手に入れて遊んだりしていたので、VRというコンテンツ自体にとても興味がありました。

 

――もともと興味のある分野でこういった案件のお話をしたので、強いご興味を持ってご参加いただいたということですね。
 では、mizuki先生が本作にご参加いただいた流れはどうでしたか?

 

mizuki氏:
 月島さんにメールをいただいたんですよね。私としては2019年頃にVTuber業界に携わってまして、VTuber事務所のクリエイティブ面の制作などをお仕事でやっている中で、その当時からKAMITSUBAKI STUDIOさんのことは知っていたんです。
 だからVSingerグループとして新しい切り口で来ているというのは当然知っていたんですが、
そんな中で10年前に初コンタクトのあった月島さんから、すごく久しぶりにメールが来たんです。それで開いてみたらこの神椿市のことが書かれていて、「こことここが繋がるんだ」と感動を覚えましたね。

 

――mizukiさんには今から数えて13年前、レジスタさんの『リベリオンズ』というゲームのお仕事をする時に、お声掛けさせていただいたことがありました。当時は諸事情で実現しなかったんですが、今回は10年前に実現しなかったコラボレーションが実現できたかなと思っております。
 お声がけした当時から、VTuberのキャラクターをモチーフにした作品をウェブで公開してらしたんですよね。

 

mizuki氏:
 そうですね。やっぱりインターネットコンテンツとして、ストーリーとVTuberをどうにかして一緒に出したいというか、展開したいという気持ちはちょっとあったんですよ。
 そこも神椿市建設中。と合致してるというか、もうすでに実際に形になっている。近いものを作っている最中だったので、すごい興味深かったですね。

 

――お声がけさせていただこうとmizuki先生の現在のお仕事について調べた際、ある種の運命を感じました。では最後に風雅先生、お願いいたします。

 

風雅:
 先ほどもお話させていただいた通り、月島先生にお声がけいただいて、という形ですね。
 お声がけいただいたそもそもの経緯で言うと、昔シナリオ・小説系の専門学校にいた頃に、月島先生が原作などで関わられていた『クロストライブ』というプレイ・バイ・ウェブにライターの一人として参加させてもらっていたんです。それで終盤の方に月島先生と直接お話させていただく機会があり、そこでご縁ができて、という形ですね。

 

――プレイ・バイ・ウェブ、通称PBWというのは一種のネット小説ゲーム、TRPGをネット上で大人数相手にするような種類の作品ですね。
 そして十数年前に私が原作、世界観設計、メインシナリオを担当させていただいた『クロストライブ』というPBW作品に、風雅先生が当時メインライターさんの一人としてご参加いただいていたという形になります。

 

 

◤◢◤ 担当シナリオについて ◢◤◢

 

――ご担当シナリオをそれぞれお聞きしてもよろしいでしょうか。

 

吉崎氏:
 私は世界ちゃんのシナリオ『Anima』ですね。あとDLCの3章と5章、それから7章の一部をやらせていただいてます。

(吉崎氏は世界の章『Anima』をメインでご担当された)

 

mizuki氏:
 僕は狸眼ちゃんルートと、派流ちゃんルートの……派流ちゃんルートはどういう表現になるんですかね?

 

――合作のような形になりますね。派流ルートは本当に難産だったシナリオで、あの1本にmizuki先生含めて4人のライターさんが、吉崎さん以外全員参加されています。

 

mizuki氏:
 僕がお手伝いさせていただいた後の情報がなかったので、『REGENERATE』を遊んだ時にクレジットにたくさん名前が載ってて、ちょっとびっくりしました(笑)。

 

――制作された順番としては真章より後くらいなので、最後の最後まで苦労していた感じでした。

 

mizuki氏:
 大変だったんだろうな、っていうのはすごく感じました(笑)。

 

――その派流の章のベース部分をご執筆くださったのが、mizuki先生ですね。いずれにしても狸眼ルートのほぼ100%、それから派流ルートの25%ないしはベースの部分をやっていただきました。

(mizuki氏は狸眼の章『ニューロマンス』をメインでご担当された)

 

――それから、此処ルートにも参加されていましたっけ?

 

mizuki氏:
 いえ、してないですね。此処ルートを読んだ時に、月島さんに感想文をお送りしたことがあったので、多分そこで勘違いされたのかな。でも、僕は直接は書いてないですね。

 

風雅:
 そんなことがあったんですね。

 

mizuki氏:
 これ、本当に初期の話ですよね。

 

――mizuki先生には各シナリオの修正点や感想やフィードバックなど、色々なご意見を制作初期の頃から、かなりいただいておりました。その流れで此処ルートも派流ルートも、色々とご意見をいただいて制作していったという経緯があります。
 以上、余談でした。それでは風雅さん、お願いいたします。

 

風雅:
 私が担当させていただいたのは、派流の章の最初の方と此処の章、それから化歩の章の前半ですね。あとはDLCを色々と。

(風雅宿は此処の章『PLAYER』をメインで担当した)

 

――それからこの場にはいませんが、月島トラがそれぞれ化歩の章、派流の章、それから此処の章など色々担当させていただいて、私(月島総記)がそれら以外のところをやっていたという形になります。

 

 

◤◢◤ 本作のシナリオは、どのように作られていったのか ◢◤◢

 

――本作のシナリオはどのように作られたのか、というお話を伺っていきたいと思います。
 ご参加されたタイミング次第で見える景色が結構違うと思いますので、ご参加いただいた順番に、吉崎先生からお話を伺っていきたいと思います。
 吉崎先生には、仕様も一切決まってない段階からご参加いただいていましたよね。

 

吉崎氏:
 そうでしたね(笑)。何もなかったわけではないんですけどプロットと設定はあったかな。あとは元の序章のシナリオ、という感じでしたね。

 

――序章のシナリオもまだ未完成で半端な状態で、VRノベルゲームというものがどういう風になるのか、まだ我々の中でもよくわからない状態でしたよね。

 

吉崎氏:
 どういう風に見えるのか、どう見せていったらいいのか、みたいなところも結構お話して進めていました。

 

――ですから吉崎先生に最初期に書いていただいたシナリオというのは、一部映像脚本のようになっていましたね。我々の中でも、本作の形式がまだ定まってなかったので。

 

吉崎氏:
 そうですね。ここは動かして、ここはノベルゲームっぽく、みたいな指示を出していた記憶がありますね。

 

――先ほどお話ししていたように、吉崎先生には世界の章『Anima』をご担当いただいたわけですが、その中でも世界ちゃんと出会うシーンの前までは2Dゲームのように表現するという予定だったので、普通のノベルゲームのような文章で書いていただいていました。
 そして世界ちゃんと出会ったらVRの表現になり、キャラモデルも動くようになる。なのでそこからは映像脚本のような書き方にするのが良いだろうと、一番最初はそういう風にご執筆いただいていましたね。

(『世界の章』で世界と出会うシーン。当初はここからシナリオの表現も変わる想定だった)

 

吉崎氏:
 ここからアニメーションっぽくなるので、もう地の文も使えませんみたいな。後で仕様が決まって、「ここもシナリオに起こしてください」みたいな修正があったのを覚えています。

 

――まだ仕様も定まっておらず、どういうゲームになるのかも定まっていない頃からご参加いただいた吉崎先生には、一緒に本作の在り方を模索していただきましたね。

 

吉崎氏:
 打ち合わせの度に、「こんなゲームがあって、とても楽しいんですよ」みたいな話をしていました。そこは、ユーザーとして色々プレイしていたから出来たことかなと思います。

 

――どういうVRゲームがどんな風に面白くてという話を色々伺い、それらのゲームをプレイして、プロット上に色々と取り入れさせていただきました。
 そして、それをもとに吉崎先生に具体的なシーンを書いていただく。そういう形で『Anima』の制作が進んでいき、本作が動き出していきましたね。

 

吉崎氏:
 そうですね。すごく楽しくやらせていただきました。私は仕様を決める立場にはいないので、好き勝手に夢ばかり語っていましたよ。「此処ちゃんとダンスしたいです」とか言ってた記憶があります(笑)。

 

――此処とのダンスは制作が難しすぎるということで最終的になくなりましたが、当時吉崎先生からご提案いただいた色々は、かなりの部分実装できたかと思います。

 

吉崎氏:
 プレイが本当に楽しみです! 

 

――さて、そういう形で吉崎先生との『Anima』の制作を通じて、本作の仕様というものが徐々に固まっていきました。しかしストーリーの方向性や温度感、リアリティラインについては、mizuki先生との狸眼の章『ニューロマンス』の制作を通じて定まっていった、と思っております。
 mizuki先生、『ニューロマンス』の制作についてお話を伺ってもよろしいでしょうか。

 

mizuki氏:
 先ほどの吉崎先生の話にも関連すると思うんですが、僕はすごく印象に残っていることがあるんです。
 狸眼の章が半分ぐらい進んだタイミングだったのかな。それを月島さんとお話ししている時に月島さんが、「この方向性で合ってるんですね」って、そういうようなことをおっしゃったんですよね。
 それで僕自身も「あっ、これで合ってるんだ」と、そういう確認をしつつやったなというのを覚えていますね。

 

――地の文の配分やキャラクターの感情の動きの見せ方といった部分について、『ニューロマンス』の制作を通じて、「本作はこういう方向性でやっていけば間違いないんだな」と思ったのを覚えております。

 

mizuki氏:
 やっぱり執筆中もそうですけど、月島さんと打ち合わせしてて思ったのは、「等身大の女の子を描く」というところですよね。「学生で、色んな悩みを抱えている等身大の狸眼という女の子を、どこまでちゃんと表現できるか」というところは、結構時間を割いて打ち合わせさせていただいたかなと。

 

――本作に限らず『EMERGENCE』など、『神椿市建設中。』にご参加いただいたストーリーテラーの皆さんは、リアリティラインについてそれぞれ悩まれた部分が多いと思います。
 ですが、mizuki先生と一緒に『ニューロマンス』を作っていく過程で、全力でリアリズムにするというか、「等身大の少女として、人間としてキャラクターを描いていく」という指針が定まりましたね。

 

mizuki氏:
 そうですね。書いてて特に力が入ったというか難しかったのが、灯台のシーンと病院のシーンで、その辺りが一番リアリティが高かったところかな。
 やっぱりキャラというか、人物の心の動きをあの辺りでしっかり描けたのが良かったポイントだったのかな、とは思っていますね。

(『狸眼の章』の病室のシーンでは、狸眼の心の動きがリアリティを持って描かれている)

 

――病院のシーン、灯台のシーンと作っていく課程で、「この方向で間違いないと確信しました」という話をさせていただいた覚えがあります。
 一話一話できていくニューロマンスは、辛い感情もドキドキする感情も、どちらもリアリズムを持って書かれていました。mizuki先生とストーリーを作っている中で、そういう風に方向が定まったように思っております。

 

mizuki氏:
 そうでしたね。

 

――余談ではありますが、制作の順番としては『Anima』の初稿、『ニューロマンス』初稿で方向が定まった『Anima』の二稿、『ニューロマンス』の二稿をお願いして、それから序章が出来上がってという流れになっています。
 仕様も決まってない、ストーリーのトーンも決まってないという中で本作を切り開いてくださった吉崎先生とmizuki先生には、それぞれ深く感謝しております。

 

mizuki氏:
 ありがとうございます。

 

吉崎氏:
 ありがとうございました。

 

――そのお二方の流れを引き継いで本作にご参加いただいたのが、風雅先生という形になります。風雅先生は結構縦長の形で本作に関わっていらっしゃったと思いますが、その部分についてお話いただいてもよろしいでしょうか。

 

風雅:
 最初に『シャーマニズム』の初稿を、その後『PLAYER』の初稿、さらに化歩の章の前半初稿をという形で、色々なシナリオの初稿に関わらせていただきましたね。

 

――風雅先生からは見えなかったかもしれませんが『シャーマニズム』と『PLAYER』はそれぞれ、mizuki先生からフィードバックをいただいて、どう修正していこうかという話をさせていただいていました。
 それぞれの章のトーンというのがまだ見えていなかったので、まずある程度書いていただいて、それで見えてきたものをまたブラッシュアップして、という流れで作らせていただいていたんですね。
 それで派流の章は風雅先生が初稿を、mizuki先生が二稿を、月島トラが三稿を書き、そして私が決定稿にして、とかなり変な作り方をしていました。
 風雅先生にメインでがっつり参加いただいたとなると、此処の章ですよね。

 

風雅:
 そうですね。初稿も、その後の二稿もということになるんでしょうか。

 

――此処の章は、ほぼ決定稿まで風雅先生にやっていただいています。此処の章をご制作いただいた頃にはだいぶ仕様も整ってきて、プロットにもたくさん資料を付けて、背景資料やキャラクター資料も一緒にお渡しできた覚えがあります。

 

風雅:
 確かに此処の章の時には背景資料をはじめ、色々な資料を一緒に渡していただいた記憶があります。

(此処の章初稿の制作は、本作の仕様やトーンが固まってきてから行われた)

 

――此処の章はどうでしたか? もちろん吉崎先生、mizuki先生がそれぞれ仕様やトーンを固めてくださったから、だから楽になるという種類のものではないとは思うんですが。

 

風雅:
 神椿市建設中。という作品で初めてゲームのシナリオに関わったというところもあったので、今思い返すと必死だったなと。すみません、答えが趣旨にあってるか怪しいんですが……。

 

――必死に喰らいついていくうちに作品が出来上がっていった、ということでしょうか。

 

風雅:
 そういうことになりますね。

 

――一人のライターの立場から神椿市建設中。を見た時、本作は書くのがすごく難しいと思います。月島トラも「神椿市建設中。って、とにかく難しい。これを書けるライターさんはほとんどいないだろう」という話をしていました。
 大ベテランであるmizuki先生も吉崎先生も、それぞれどうでしたか? 本作の執筆難易度について、私は結構高く感じたんですが。

 

mizuki氏:
 難しいですよ、これ。僕も打ち合わせの時に多分伝えたはずですよ、「これ難しいですよ」って(笑)。
 自分の書く範囲は分かるんですけど、これが最終的にどういう形になるのかというのが見通せない状況が結構ありました。
 つまり自分の書いたもので合ってるのかっていうところも、セーフラインがちょっとわからなくて苦労した部分もありますね。

 だから先ほどの話だと、風雅先生の此処ルートとかは難しいと思いますよ。シナリオルートの解放順とかを考えても此処ルートって通常ルートよりも難しいし、その後の化歩ルートとかも難しいし。だから風雅先生は、特にプレッシャーのある部分を書かれたのかなって思いました。

 

――吉崎先生はどうでしたか? 本当に暗中模索の状態から本作に参加していただいたと思うんですが、執筆難易度はどんな印象でした?

 

吉崎氏:
 神椿市建設中。という作品は、設定も入り組んでいてキャラクターも多いし、そのそれぞれのお話でやってることは全然違うし、今でも全部把握できているかは実は自信がないんです。DLCの3章はプロットから任せていただいてとても光栄でしたが、「合ってるのかな?」ってずっと思いながらやっていました。
 なので難易度は高いかなとは思うのですが、キャラクターと神椿市という世界観がすごく魅力的で、難しかったなという印象よりは、書いていて「楽しかった!」という記憶の方が強いですね。本当に最初から最後まで、ずっと楽しく書かせていただきました。

 

 

◤◢◤ 歌と本作の関わりについて ◢◤◢

 

――ここからは、歌と本作の関わりについてちょっとお伺いしたいと思います。
 mizuki先生はもともとVTuber業界でのVTuberさんを使ったストーリーコンテンツの制作、そういうものにご興味と知見があったと思います。
 一方で吉崎先生や風雅先生は本作に関わるまではKAMITSUBAKI STUDIOさんやVTuber、VSingerなどの方についてご興味はあったんでしょうか? それとも、本作に関わられてからV.W.Pの方々のことを知ったんでしょうか?

 

吉崎氏:
 私はVTuberやVSingerの存在自体は知ってましたが、それほど詳しい分野ではなかったので、神椿市のシナリオを書くようになってから知っていきました。

 

風雅:
 私は本作に関わる前から、VTuber自体は見ていました。追っていた個人VTuberの方がたまたま好きな曲に『いろはに咲きて』をあげていて、それでちょっとだけヰ世界情緒さんの曲は聞いたことがあったんですが、V.W.Pの皆さんのことまでは全然知らないという状態でしたね。

 

――お二人とも、最初はそういう状態だったんですね。しかし、実際に書いていただいたシナリオに関しては、それぞれの楽曲やアーティストの世界観、歌詞が結構ストーリーに反映されていて、その辺りがうまく連動しているように感じました。
 本作を制作するにあたって、やはりV.W.Pの皆さんの曲を聴いたりされたんでしょうか。吉崎先生から、順にお伺いできればと思います。

 

吉崎氏:
 ずっと聴いてましたね。もう出されてる曲は全部聴いて……シナリオの章タイトルにもなっている曲については、その章を書くときはその曲をずっと聞いていました。
 それこそ先ほどおっしゃっていた、歌詞として出されているキーワードみたいなものは、「きっとユーザーさんは気づくはず」と思って、盛り込んだりしていましたね。

『とめどなき白情』。本楽曲を一例として、本作の章タイトルは関わられたアーティストの皆さんの楽曲タイトルから引用されている)

 

mizuki氏:
 僕もそうですね、ちょっとした隠し味みたいな感じで。曲の印象的な歌詞の部分とかをセリフに織り混ぜてみたりっていうのを、ちょっとやってみたのはありますね。

 

――これがまた非常に評判が良く、『REGENERATE』の感想として「歌詞が入ってる!」と喜んでらっしゃるものをたくさん見かけました。
 特に狸眼の章では、谷置狸眼というキャラクターと理芽さんの歌で描かれる女の子の口調が似てるというのがあって、割と自然にスッと無理なく、絶妙なタイミングで歌詞の言葉が入ってくる。そう言う形で、歌詞とストーリーの親和性をすごく高めてくださっています。
 「音楽を物語にする、物語を音楽にする」というのが、神椿市建設中。プロジェクトの一番最初の理念だったんですが、それを高いレベルで達成していただいたと思っております。

 

mizuki氏:
 プロットを拝見した時から曲がピックアップされていたので、おそらくこの曲の雰囲気を何かしらで出した方がいいんだろうな、というのは思いつつ書きましたね。

 

――まさしくおっしゃる通りです。当時うまく言葉にできていなかったと思うんですが、それを期待しておりました。風雅先生はどうですか?

 

風雅:
 やっぱり自分も章タイトルになっている曲は、なるべく全部聴いてました。もちろん、章タイトルになっていない曲もですね。ただ聴きながら書くというのができないタイプなので、聴くときは聴いて書くときは書いて、という感じでした。

 

 

◤◢◤ 力を入れた所や見どころについて ◢◤◢

 

――本作のシナリオ制作に関して、それぞれ特に力を入れていただいた部分や見どころについて、ご自由にお話いただければと思います。

 

吉崎氏:
 ふんわりした話になってしまうかもしれないんですけど、世界ちゃんの章は「カルト宗教に囚われた生き神の少女が、自己を取り戻して強さを得ていく」という物語ですよね。
 もともと世界ちゃんって、すごく儚くて可愛らしい見た目の少女だけど、歌声には力があって……という説明がそのままストーリーになっている感じですよね。だから序盤は感情も希薄だけど本当はとても強いものを持っている、その魅力みたいなものは描きたいなっていうのは、プロットを読んでいる時からありました。
 主人公達と出会った当初は、自分から動いてもいるんだけれど、諦念が根っこにあって、助からないことも受け入れてしまう。でもラストでは絶望に対して立ち向かうことを決めて、語る言葉も強く強くなっていく。ネタバレになるので伏せますが、とあるキャラにも言い負かされたりしなくなって(笑)。

 ヰ世界情緒さんの普段のお話ぶりを見ていて、結構言葉遣いが面白い方だなっていうところもあるので、自分の気持ちを一生懸命に伝える、みたいなところはご本人様にもあるのかなと感じたのもあるかもしれません。
 一生懸命で強くて……でもそれは誰かを傷つけるとか、そういう強さではなくて芯の強さというか、そういうところは彼女の魅力として描きたいなと思って力を入れていましたね。

 

――キャラクター中心のストーリー制作の仕方だったんですね。

 

吉崎氏:
 そうですね。キャラクターの想いで描いていくシナリオだったと思います。あとは主人公くんも世界ちゃんも両方とも情感が幼いというか、二人とも記憶や普通の日常といった前段階がないから、あんまり年相応じゃない感じがあったので……なんて言うんでしょう。
 この2人の関係性っていうのは主人公とヒロインではあるんだけれど、恋愛感情みたいなところはそこまで意識していない。でも、成長して思い出した時に「あれは確かに恋だったな」って思い返せるような、すごくキラキラしたものを印象として得てもらえたらいいな、みたいな、そういう感じで書いてましたね。

(世界の章では情感の幼い二人の、いつか恋として思い返されるような交流が描かれている)

 

――素敵なお話でした。お人柄がシナリオに出ているような、シナリオがお人柄になっているような、そんなお話でしたね。続けてmizuki先生、お伺いしてもよろしいでしょうか。

 

mizuki氏:
 さっきもちょっと同じようなことを言っちゃったんですけど、やっぱり感情の動きとかですよね。

 

――世界ちゃんのシナリオは『幼さ』が一つキーになっていると思いますが、逆に狸眼の章は15歳から17歳の思春期の少年少女のお話という感じが強くありました。等身大のリアルな心情や、感情の動きと言いますか。

 

mizuki氏:
 これ表現が難しいんですけど、谷置狸眼は主人公くんが好きなんですけど、これをダイレクトに表現したらダメなんですよ(笑)。
 なので、それをどういう風に、「その可能性もある」ということを伝えつつ隠しつつ表現しなくちゃいけないというところは、結構気を使って書いた部分です。

 

――『REGENERATE』の実況者さんの中で、「狸眼ちゃんめちゃめちゃ思春期なんだよ。思春期の少女そのものなんだよ!」という風におっしゃっている方がいました。まさしくそんな感じでしたね。

(狸眼の章では、思春期の少年少女の等身大の感情が描かれている)

 

mizuki氏:
 そうですね。

 

――素直になれないのはツンデレ的な感じじゃなく、内心を隠すというか、それは優しさから来るものだったり、単に恥ずかしいからだったりなのかもしれませんが、そういう言葉にできないような10代の気持ちというものが、すごく表現されているように感じました。

 

mizuki氏:
 要は、「想いを伝えられないけど」みたいなもどかしさもあるんですけど、なんていうんだろう……想いを伝えることが、必ずしもいいわけじゃないというか。
 そういう部分で言うと、谷置狸眼ちゃんは大人な部分もあるし、年相応の部分と大人の部分が発動してるっていうのもあると思うんですよ。
 伝えてしまうと、バランスが崩れるんですよね。狸眼ちゃんも別にバランスを崩すことを望んでないし。今ふんわりした話をしてると思うんですけど、本当にこのふんわりとした感じをシナリオに書いたと思います。

 

――そのバランスを保とうとしている感じが、『ニューロマンス』の人間ドラマの方の緊張感とサスペンスの方の緊張感の両方で、すごく良いスパイスとして効いていたと思います。
 『Anima』も『ニューロマンス』もそれぞれまったく別の、ジャンルごと違うようなお話なんですが、それぞれに素晴らしい魅力があります。吉崎先生、mizuki先生、それぞれのライターさんの個性が出ていたと私は感じております。
 この流れで、風雅先生にもお伺いしてもよろしいでしょうか。

 

風雅:
 力を入れたところで言うと『PLAYER』は、旅の一行はみんな気に入ってもらえたらなと思いながら書いていました。みんなを気に入ってもらってこそ、後半の展開が効いてくる話だと思うので。

(此処の章では、仲間たちとの短い旅のひと時が描かれている)

 

 あと、『PLAYER』のキャンプシーンの後半ですね。あそこは私からご提案させていただく形で入れてもらったシーンなので、そういう意味でも特に力を入れた部分になります。

 

――『PLAYER』というストーリーは、短いサイクルの中で一気に新しい仲間が増えていきつつも、それぞれのキャラクターの好感度が高くならないと感動が生まれない構造の話になっております。
 そういう意味で短いRPGのような構成のお話は、風雅先生の個性が出ていたと思います。ソーシャルゲームやプレイ・バイ・ウェブで大量のキャラクターを好感度高く書くということを、これまでのキャリアの中でやってくださっていたという部分ですね。
 あと、個人的に風雅先生は此処さんがお気に入りなのではと思っているんですが、その辺りどうなんでしょうか。

 

風雅:
 そうですね、個人的にもかなり此処さんはお気に入りかなと……(笑)。

 

――此処さんを描かれる時、熱が違うなという感じがすると思っております。
 死んでも弱みを見せない主人公くんが、作中で唯一弱みを見せるところが此処さんの先ほどのキャンプ後半のシーンなんですよね。これは私のプロットというよりも風雅先生のオリジナルの部分なんですが、おかげで不屈の主人公くんにある種の人間味が出たと思います。
 また余談ですが、本作は主人公と各メインヒロインとの関わり方が、それぞれ違うようにしたいと思っておりました。
 世界ちゃんとの関わり方というのは吉崎先生がおっしゃった通り、情感が実はかなり幼い、少年少女というか幼年期の2人、過去が希薄な2人が出会って、お互いと関わることによって心を育てていくという関わり方が面白いと思いますし、『ニューロマンス』での狸眼ちゃんとの関わり方は本当に、15歳と17歳の少年少女のロマンスの話、青春物語として出来上がっていったと思います。此処さんとの関わりもまた、話すとネタバレになりやすい部分ですので詳細は伏せますが、また全然別の関係性が描かれるという感じですね。
 それぞれのライターさんのお力を借りて本作を作った一番の良さが、その辺りのバラエティという部分に出たと思っております。

 

 

◤◢◤ ここだけの話 ◢◤◢

 

――それではここだけの話、苦労話や打ち明け話などをお話いただければと思います。

 

吉崎氏:
 これネタバレになっちゃうかもしれないんですけど、DLCの3章についてが現時点で1番気になっていますね。元のアーティストさんがお好きな人には多分気に入ってもらえるんじゃないかなと反応を楽しみにしつつ、思い入れが強い人にはどう見えるんだろうと。

 

――DLCの3章はすごく美しいお話としてまとまっていますし、バトルもシナリオの個性にあったものになっておりますので、ユーザーさんは楽しみにしていただければと思います。

 

吉崎氏:
 本当にドキドキしています。この世界ではどういう道を辿るのか、なんて言葉をかけるのかっていうところも通してぜひ見届けていただければ。

 

――バトルについては珍しく、吉崎さんの方から「こういう感じのバトルにしてほしいです」というアイデアをいただきましたよね。

 

吉崎氏:
 そうですね。「ちょっとこれは、キャラクターが変わった証拠として入れたいな」っていうのがあったので、ご提案させていただきました。

 

――全部ではないですが、かなりの部分について実現できたと思うので、お楽しみにしていただければ幸いです。

 

吉崎氏:
 楽しみにしております。

 

mizuki氏:
 ここだけの話というと、僕は化歩の章(再)がすごく印象に残ってます。前にも話題に出た灯台のシーンの、裏のシーンですね。「こう書いてくるのか」って。あれは見た瞬間、正直「ずるい」と思いましたね(笑)。でも、本当に良かった。

(狸眼の章の灯台のシーン。化歩の章ではこのシーンの裏が描かれる)

 

 化歩の章(再)が僕は本当に好きでした。ゲームに熱中した時にやめられないっていう感情があるんですけど、化歩の章のエンディングからその後、やめるタイミングがわかんなかったです。

 

――監督として嬉しいお言葉です。また、いちシナリオライターとしては狸眼の章の担当ライターさんにあのシーンを「ずるい」と言っていただけるのは、最大限の賞賛だと思います。

 

mizuki氏:
 本当によかったです。

 

風雅:
 自分はVRじゃなくて2D版の話になってしまうんですが、此処の章で大量のテセラクターと戦うコマンドバトル、あそこは頭がパンクしそうになりながら作っていました(笑)。

 

――その話は面白いので、ちょっと掘り下げましょう。此処の章は2D版とVR版で、それぞれ独自のシステムで大量のテセラクターと戦うシーンがあります。
 2D版とVR版で表現がまったく違うし、展開そのものも全然違うんですが、風雅先生には2DとVR版双方の複雑怪奇な、何十分岐もする構造のバトル部分を作っていただきました。あれが大変だったということですね。

(此処の章には、多数のテセラクターたちと乱戦を繰り広げるパートが存在する)

 

風雅:
 そうですね。VRの時は月島先生に全体の流れをかなり細かく作っていただいた状態から、自分が文章に起こしていく。そういう形だったので、まだそこまででもなかったんですが、2Dの時は流れから全部自分で詰めていったので、迷宮に迷ったような気持ちになりながら作ってた記憶があります(笑)。

 

――おかげで2D版はできましたし、VR版はより素晴らしい表現になっていると思っています。VR版のあの戦いはかなり面白くなっていると思いますので、これもユーザーさんには楽しみにしていただきたいですね。
 その他にぜひ話しておきたいことなど、皆さんございますか?

 

mizuki氏:
 一つあるのが、この作品のお話をいただいた時からずっとリピートして聞いてるのが、花譜さんの『痛みを』って曲なんですよ。

 

(『痛みを』。作中でも序章に歌唱シーンが存在する)

 

 もう聴きすぎて、『痛みを』を聴くと『REGENERATE』のストーリーが頭に浮かんでくる状態になってるっていう(笑)。
 元々この曲もすごく好きだったし、作品内でも序章でいい形で表現しているので、すごく思い入れ深い曲だなと。

 

――本作は『痛みを』から始まったように思っております。まだストーリーが全然できていない頃に、『痛みを』という曲は作られました。そしてこの歌を支えにというか、本作そのものを制作するにあたってのBGMとして、ずっと流れていたように思います。

 

mizuki氏:
 そうですね。もう本当に、制作のテーマ曲みたいな感じで聴いてましたね(笑)。あとはその後に来た、主題歌の『真偽』もすごく感動しました。

(本作および『REGENERATE』の主題歌『真偽』)

 

 

――『真偽』はこちらのシナリオが先にできてから、シナリオに合わせて作っていただいた曲ですからね。MVの内容も『神椿市建設中。』そのものになっていて、すごく良かったですね。

 

mizuki氏:
 『真偽』は理芽さんがセンターの曲なので、ちょっとプッシュしておきたいところです(笑)。と、僕はそんな感じです。

 

吉崎氏:
 そうだ、曲のお話で思い出したのですが、私、ヰ世界情緒さんの曲で一番最初に好きになった曲が、『シリウスの心臓』で。もともと大人気曲でもあるとは思うんですけど、ずっと好きなんです。
 それで、世界ちゃんの章のエンディングタイトルのひとつが『シリウスの心臓』だったんですよね、もともとは。それが途中で変わって、実はちょっとショックだったりもしました。

『シリウスの心臓』。世界の章の章タイトルに引用されているが、もとはエンディングタイトルのひとつだった)

 

――エンディング曲は一つしか使えない、というのが事実上の制約だったんです。それでストーリーの内容上、エンディング曲は『ARCADIA』の方を採用しました。でも初期の構想では、『シリウスの心臓』が悲劇的な方のエンドのエンディングテーマだったんですよね。
 ですが『シリウスの心臓』は今回、非常にいい形でイベントとして作っていただいたと思います。

 

吉崎氏:
 今の星を見るイベントの形も好きで、ユーザーさんからも評判が良くてとても良かったなとも思っています。『シリウスの心臓』がエンディングでなくなったことを、非難したいわけではないです(笑)。 

 

――それはそれとして寂しくはある、という感じでしょうか。 

 

吉崎氏:
 そうですね。私が世界ちゃんのシリウスになれたはずだったのに、みたいな(笑)。 

 

――既にストーリーを把握されているユーザーさんには、今の吉崎先生の発言の意味を察していただきたいですね。 

 

風雅:
 TIPS作るのにシナリオを読ませて頂いた時、イベントのシーンは「甘酸っぱ~!」ってなりながら読んでました(笑)。 

 

mizuki氏:
 僕もゲームでプレイしたんですけど、めちゃめちゃいいシーンでしたよね。

 

――すごくいいシーンだと思います。各シナリオ最低一つはエモいシーンがあると思うんですが、狸眼の章だと灯台のシーン、此処の章だとキャンプの後半のシーン、そして世界の章だと星を見るシーンですね。

 

mizuki氏
 派流ちゃんの章だとVRで楽しみなのが、歩道橋のシーンですね。距離感がぐっと近づくポイントかなって思ってるので、VRで見るのが楽しみですね。

(各ルートには、最低ひとつは『エモい』シーンが存在する)

 

 

――青春感が2D版よりも増したと思いますので、mizukiさんのおっしゃる通り、そこも見どころとして楽しみにしていただきたいですね。

 

 風雅さんはその他に話しておきたいことなど、何かありますか?

 

風雅:
 見どころのところで言いそびれていたんですが、化歩の章の前半についてですね。
 それまでの章の化歩ちゃんとのやり取りとはちょっと違って、青春感の強いやり取りをするところを、皆さんに楽しんでいただきたいなと思います。後半はそれどころじゃなくなっちゃいますが……。

 

――mizuki先生は、「化歩の章の後半から、止め時が見つからなかった」とおっしゃってくださいましたね。

 

mizuki氏:
 本当ですよ。後半は展開のスピード感もいいですし、やっぱりあそこで終われないですよね。

 

 

◤◢◤ まとめ:皆さんへのメッセージ ◢◤◢

 

――最後に、皆さんからこのインタビューをご覧いただいているユーザーの方々への、メッセージをお伺いできればと思います。

 

吉崎氏:
 手に取ってくださる方の中には、2D版でシナリオの内容を知っている方もいらっしゃるとは思います。ですが、これまでの話にあるように全然違うところもありますし、世界ちゃんのシナリオのツタ登りとかも、VRで実際に手を動かしていくことで、臨場感と辛さを体験できると思います。
 自分がそこに立って世界に干渉していく面白さを実体験として味わえるのがVRの良さですし、それをこの神椿市っていうコンテンツで満喫できるのは絶対楽しいと思うので、ぜひ楽しんでいただければいいなと思います。

(VR作品である本作ではバトルパートをはじめ、自分自身がそこに立って物語に干渉していく体験が味わえる)

 

mizuki氏:
 やっぱりVRで没入感があると思うので、2D版よりも距離感が近く感じたりといった効果もあるのかなと思ってます。
 シナリオ自体もちゃんと描いていて、そういう中でのVR体験というのは観測者の皆さんにとってもすごく新しい体験だと思うので、そこを楽しんでいただけたら嬉しいなと思います。

 

風雅:
 VRということでキャラクターがすぐ近くにいる、神椿市の世界の中に自分がいるというところの没入感はすごいと思います。それにVRの没入感の中で、自分自身で敵を撃つって部分も、後半になってくると重みが出てくるのかなと。
 そのあたりの体験をぜひ、観測者の皆さんにお楽しみいただきたいなと思います。

 

――今回はインタビューの最終回にふさわしい、非常に貴重なお話を伺えました。

 

 いろいろな想いを込めさせていただいて、ここでインタビューを終了させていただこうと思います。本日はありがとうございました。

 

(インタビュアー:月島総記 / 記者:風雅宿)

 

【インタビュー記事】朝比奈健人様

2026.04.30

【前書き】

 『神椿市建設中。』シリーズ最大規模の物語となるVRアドベンチャーゲーム、『神椿市建設中。VIRTUAL REALITY』を手がけたクリエイターの方々から、本作を巡る様々な想いについて伺っていく本インタビュー。
 今回は本作の音楽を担当された、朝比奈健人氏のお話を伺った。

 

 

◤◢◤ 自己紹介 ◢◤◢

 

――スタッフインタビュー第5回、今回は本作の音楽をご担当いただいた、朝比奈健人さんのお話をお伺いしたいと思います。それでは、ご経歴や自己紹介をお願いいたします。

 

朝比奈健人氏(以下、朝比奈氏):

 朝比奈健人と申します。フリーランスで長いことゲーム音楽の仕事をやっておりまして、その中でPIEDPIPERさんからお声掛けいただき、神椿市建設中のプロジェクトに参加することになりました。
 神椿のプロジェクトとしましては、ゲームのBGMの他にもライブのBGM、アーティストさんの歌もの(ボーカル入り楽曲)の編曲、あとはCDのオープニング、エンディング、またテレビアニメの神椿市建設中の音楽など、神椿市全般の音楽を担当させていただいております。

侵入

(朝比奈氏は本作の他にも、神椿作品全般の音楽をご担当されている。
その一例として、V.W.Pの皆さんのセカンドアルバム『覚醒』より、
『侵入』をご紹介させていただく)

 

◤◢◤ 本作の楽曲制作に参加された経緯 ◢◤◢

 

――では、本作にご参加いただいた経緯について、お話いただければと思います。

 

朝比奈氏:
 先ほどのお話と重なる部分もありますが、私が色々なゲームの仕事をフリーランスでやっていた時に、PIEDPIPERさんが神椿のプロジェクトの中で、BGMや劇伴(舞台作品や映像作品の中で使われる音楽)を映画的に作れる人を探していたんです。
 その時に私のカラーが目に留まったらしく、PIEDPIPERさんからお声掛けいただく形で、神椿のプロジェクトに参加させていただきました。
 一番最初はライブのBGMを担当したんですが、PIEDPIPERさんは「ライブを一つの映画のように構成したい」というテーマをお持ちでした。それで歌ものの間にBGMを挟んだり、オープニングやエンディング、変身シーンなどのBGMを作ることで、ライブ全体を通して映画的なストーリーを作る。そういった形で、テーマに基づいて制作させていただきました。
 もともとゲームやアニメの音楽をやるという前提でライブのBGMを担当していたのですが、神椿の世界全体を音で表現するという役割で、チームに参加させていただいたという形になります。

 

――最初はライブのBGMからとのことですが、どのライブからご参加されていたのでしょうか?

 

朝比奈氏:
 幸祜さんの2ndワンマンライブからになります。そこから先のバーチャルライブシリーズは、すべて私がやらせていただきました。

(幸祜さんの2ndワンマンライブ『PLAYER Ⅱ』。
朝比奈氏は本ライブから、神椿作品のBGM制作にご参加された)

 

◤◢◤ 余談:アルバムのインストゥルメンタル曲について◢◤◢

 

――少し余談になるのですが、アルバムにもインストゥルメント系の楽曲が収録されていますよね。これらの曲はライブにおける、オープニングやエンディングと同じ立ち位置のものとして作られているのでしょうか?

 

息吹-instrumental-

アルバム収録のインストゥルメンタル曲の一例。
ヰ世界情緒さんのアルバム『色彩α』より『息吹-instrumental-』

 

朝比奈氏:
 PIEDPIPERさんの考えとして、アルバムについても最初から最後までを物語的・映画的にしたいというものがあります。オープニングとエンディングをつけることで、アルバムにも物語をつけたいと。
 なのでアルバムを出すときはオープニング・エンディングをつける形になっていて、それらの楽曲は、大体私が担当しております。

 

 

◤◢◤ 本作でのご担当作業について ◢◤◢

 

――それではお話戻りまして、本作『神椿市建設中。VIRTUAL REALITY』における朝比奈さんのご担当作業について、詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか。

 

朝比奈氏:
 主題歌、挿入歌のメイン5曲(『真偽』『神話』『決意』『流転』『反逆』)全てのアレンジと、本作のために新規で作られたBGMを全曲やらせていただいております。あとは、『とめどなき白情』のアコースティックバージョンのアレンジもさせていただきました。
 BGMについては本作用の新規BGMが全部で56曲ありまして、その56曲の作編曲をやらせていただいたという形です。ゲームの中でこれだけのBGMを作り、さらに挿入歌と主題歌のアレンジも全部やらせていただくというのはなかなかないことなので、この作品は自分の中で思い入れの深いものになっております。

真偽 神話 流転 決意 反逆

(『神椿市建設中。VIRTUAL REALITY』の主題歌・挿入歌のメイン5曲。
朝比奈氏は全曲のアレンジをご担当された)

 

――それではまず、本作のBGMについて掘り下げていければと思います。56曲のうち、最初の半分ほどは自由に作っていただくような形でしたが、いかがでしたか?

 

朝比奈氏:
 毎月のように何かしら神椿に触れてきていたので、世界観やキャラクター設定、ストーリー設定に関して、自分の中で思い描いているものが結構ありました。そこを自由にやれた、「自分なら神椿市をこう表現する」というところを幅広くやれたな、と思っております。
 最初の方の曲は汎用性のあるもの、幅広いジャンルの音楽が多くを占めていました。つまり感情表現をするものや日常シーンで使うものが多かったので、そういう意味では自分らしく、幅広く表現することを意識できたと思います。
 なので自由にやらせていただいたことで、「神椿市を自分ならこう描く」という自分のカラーが、ここでひとつ作り上げられたかなと思っております。

 

――初期楽曲はゲーム中でもかなり多用させていただいておりますので、プレイされた方が本作のBGMとしてイメージするのは、これらの楽曲かと思います。
 このように基本的な使いやすい曲が揃った状態から、次は特別なシーンで使われ、ユーザーさんの心に残ることを目的とした楽曲の制作に入っていきました。
 例えば、主人公や魔女の娘たちにとって特別なシーンで使われる『夏色』、神椿市の真実が解き明かされるような場面で使われる『少年』、テセラクターの脅威がいよいよ露わになってくる時に使われる『危機』。主人公たちが厳しい絶望に立ち向かっていくようなシーンで使われる、『悲壮』などがこの頃に作られております。
 これらの楽曲は、いろいろと話し合いながら作っていきましたね。

 

朝比奈氏:
 これを月島さんと話し合いながら作ったのは、すごくいいことだったと思っています。全体の流れとシナリオの中でのBGMの役割について、非常に深く話し合いながら作ることができましたので。
 原作者の方と作曲家が、ここまで深く1曲ずつについて話し合いながら作れるゲームというのは、すごく少ないんです。渡された参考曲に似せる作り方もよくありますが、今回はそうではなく、お互いに提案し合いながら、コミュニケーションの中で生まれた楽曲が多いんです。
 これができたことは今回、作品の深さという点ですごく意味があったなと思っております。
 この打ち合わせも1回や2回ではなく何回も、それこそ年単位で、「神椿というものをどう捉えているか」という部分を、お互いにすり合わせながらやらせていただきました。

 

――BGMの発注というお話ですと、『ネクロマンス』『トーテミズム』『Psyche』『ENEMY』の戦闘曲4曲は、難しいオーダーをさせていただいたと思います。
 ワンマンライブのタイトルをもじった曲名のこれら4曲は、各アーティストさんの代表曲のアレンジ、かつ戦闘曲という発注内容でした。
 戦闘曲でありながらそのストーリーのジャンルも意識し、なおかつ代表曲のメロディーにも目を向けるというかなりアクロバティックな作り方をしていただきましたが、大変ではありませんでしたか?

 

朝比奈氏:
 ちょっと補足させていただくと、これらの楽曲は普通のオリジナルのBGMから始まって、途中のサビ的な部分に(代表曲の)サビのメロディーラインが少し入ってきます。全部が歌ものの曲をアレンジしたというよりは、オリジナルBGMの中に、それぞれのテーマの歌ものがさりげなく後ろに隠れているという形なんです。
 ですので曲を知っている人が聴くと、「BGMがノリノリになってきたら、知ってる曲がちょっと入ってきたぞ」となるわけです。その驚きを、皆さんに体験していただきたいと思いました。
 確かに苦労はしましたが、僕はライブの中でそれぞれの代表曲をエンディング用にオーケストラバージョンでアレンジをしたり、オープニングの中でメドレー的にちょっとだけV.W.Pさんの曲のメロディーを混ぜたアレンジを入れる、といったことをやってきていました。なのでこういう作曲は得意技といいますか、ライブを見てくださっている観測者の皆さんは、「朝比奈っぽいぞ」と感じてくださるのではないかなと。

 

――そういった楽曲作りは、まさに朝比奈さんの得意分野だったということですね。

 

朝比奈氏:
 ここでもう一つ補足させていただくと、自分はBGMや劇伴の作曲家という一面の他に、歌もののアレンジャーという一面があります。自分の曲をアレンジするのではなく、他の人が作った曲をアレンジするという仕事を、これまでにいくつもやってきたわけです。
 このBGMに関しましては、完全に自分のカラーになってしまっています。ただ、神椿に関わる優秀な作曲家さんたちが作った素晴らしいメロディーがあってこそ、朝比奈のカラーになった。そういう風に感じています。
 また、元々の1人ずつのテーマのジャンルというのが、歌もののアレンジと全く別のタイプのジャンルということもありました。なので原曲の面影が、メロディ以外の部分に全くないんです。後ろのBGMの部分に関しては、「これは絶対同じ曲じゃないだろう」というぐらい別のジャンルになっていて、ただメロディーだけがさりげなく入っている。
 そのパフォーマンスがすごくバトルらしくもなりましたし、V.W.Pさん一人ずつのキャラがうまく表現できたかなと思います。

(各戦闘BGMは各章のジャンルを表すような曲、かつ各アーティストの楽曲のメロディを取り入れるというオーダーのもと制作された。
取り入れられた楽曲は、いずれも各章の『Q』の名称の元ネタになったものだ。
『ネクロマンス』なら『クライベイビー』、『トーテミズム』なら『台風の眼』、
『Psyche』は『パンドラコール』、『ENEMY』は『レイヴン・フリージア』である)

 

――続きまして、主題歌のアレンジについて伺えればと思います。今回、インストゥルメンタルアレンジを本作の主題歌・挿入歌、全てに対して行っていただきました。こちらについて、朝比奈さんの思いを伺ってもよろしいでしょうか。

 

朝比奈氏:
 今回、ちょっと面白い部分がありまして。主題歌と挿入歌の歌ものも自分がアレンジしているので、自分のアレンジをいかに違うものにするかという面があったんです。そこで感じた歌ものとの違い、ゲームのBGMの一番面白い部分というのが、尺やテンポを変えられるということでした。
 例えば『真偽』のインスト版は「何の曲だろう?」と思うようなイントロから始まり、そこから『真偽』のメロディーが現れます。だけど、しんみりしたバラードになっている。インストの場合、こういう風に間延びしたものがすごく気持ちよくなることも、歌もの以上にあるんです。
 全く違うシーンに使うので、全く別物に作り変えることができる。だけどメロディーラインはしっかりとみんなが知っている曲で、馴染みやすい曲になる。ライブのエンディングでいつもやっていることになるんですが、速い曲をバラードにする、オーケストラにするということがすごく多いんです。特に『真偽』は、そういったニュアンスが出ているかと思います。

 

【紹介映像】「神椿市建設中。REGENERATE」上位特装版特典 サウンドトラック

(『真偽』をはじめとした主題歌のインストゥルメンタルアレンジは、
『REGENERATE』の上位特装版特典のサウンドトラックに収録されている)

 

――ひとつの曲が様々な形でアレンジされて使われているということについては、もともと観測者だった方々にはもちろん、本作から神椿市やV.W.Pの皆さんを知った方々からも、非常にご好評いただいています。
 例えば『真偽』という曲を知らなくても、作中でいろんな形で何度も聴いて、耳に馴染んだところで満を持してボーカル版が流れる。そこで皆さん感動してくださっているようです。

 

朝比奈氏:
 ボーカル版を聴く前にこれを一回耳にしておくと、初めての曲ではない形でボーカルを聴けて、何割か増しになって歌詞が入ってきます。この相乗効果があるのではないかなと。
 こういうメインテーマの旋律が何回もゲームの中に現れて、耳にだんだん残っていくというのは、やっぱり音楽を作っていて一番素晴らしいことだと思います。

 

――さらに本作では、変身BGMという特殊な音楽も作っていただきました。こちらについて、朝比奈さんからご説明いただいてもよろしいでしょうか。

 

朝比奈氏:
 ストーリー中で特にバトルの前や、何かが起こるきっかけのシーンで使う音楽のことですね。最初にずっとループさせた音楽があって、そこからどこかのタイミングで次に繋がっていく、そういう音楽になっています。これもやはりアーティストさんそれぞれの、ジャンルやイメージを共有しながら作らせていただきました。

 

――変身後に流れるその魔女の娘の歌の、いわば前奏曲として作っていただいていますよね。

 

朝比奈氏:
 はい、イントロ的な形になるようにしました。

 

――これはインタビューの読者の方向けの解説ですが、変身曲はちょっと変わった作りになっています。
 通常の映画やアニメの音楽であれば曲の進行を完全にコントロールできますが、ゲームはユーザーさんが進行していくものなので、それができません。
 そこで朝比奈さんと一緒に考えさせていただいたのが、変身曲のシリーズは途中から繰り返しの旋律になるというものです。途中から後半部分をループするようになっていて、変身シーンが終わってボーカル曲が始まるところでループが解除され、歌もののBGMに突入するという構成になっています。
 変身BGMはそういう意味で、技術的にかなりトリッキーなことをやっていただきましたね。

 

朝比奈氏:
 ここは色々と話し合いましたね。次のタイミングへ綺麗に行くようにするために、どのぐらいの長さのループにするか、どうすると綺麗になるのか。どのくらいのイントロの長さなら、進めるのが早い人でも気持ちよくループの部分を聞けるかといったところを、いろいろ計算して作っていきました。

(魔女の娘の変身シーンで流れる楽曲は、
いずれもゲームという媒体に合わせたトリッキーな作り方がされている)

 

――朝比奈さんが手がけられた楽曲は『REGENERATE』上位特装版同梱のサウンドトラックに入っておりますが、『VIRTUAL REALITY』でしか聴けない『宿命』と『境界』という曲もありますよね。
 こちらは本作のお仕事どころか、アニメ版のお仕事も終わっていたくらいの頃にお願いしたと記憶しているんですが、突然そんなことを言われてどうでしたか?

 

朝比奈氏:
 集大成といいますか、神椿の楽曲をゲームやアニメで色々作ってきて、最後に作るのがこれらで良かったなという想いがあります。
 クライマックスのバトル的な曲と、VRならではの広がる空間を作り上げる、メロディーの主張はないんだけれども存在感はある曲を作れたことは、最後の締めとして良かったなと。
 ただ、先ほどの変身曲も同様なのですが、音源で聴く手段がないんです。56曲作った中でサントラに入っているのが42曲なので、実は14曲ほどゲームの中でしか聞けない曲があります。

 

――読者さんへの解説までにお伝えしますと、本作『VIRTUAL REALITY』では各章が始まる時にアイキャッチが入るのですが、このアイキャッチで使われている短い曲などは、サントラにも入っていない本当にレアな曲となっております。
 これはアイキャッチ込みで素敵な曲だと思いますので、ぜひVR版をプレイして聞いていただければと思います。

 

朝比奈氏:
 アイキャッチに変身曲、あとは今回のオリジナルの曲も聴けないので、その辺りはぜひVRをプレイして頂ければと思います。

 

――朝比奈さんには『REGENERATE』の主題歌5曲とは別に、本作の主題歌をさらにVR版のために再アレンジしていただいていますよね。この5曲についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

 

朝比奈氏:
 まず、ちょっと強調させていただきたいことが一点あります。
 今ゲームのEPが、『都市』と『都市Ⅱ』の二種類出ていると思います。『都市』が『REGENERATE』のEPで、『Ⅱ』の方は『VIRTUAL REALITY』のEPになるのですが、「何が違うんだろう?」と思われている方が結構いらっしゃるようなんです。
 なのでここで強く主張させていただきたいのが、『都市Ⅱ』にも収録されているVR版の主題歌5曲は、『REGENERATE』版と全てアレンジを変えているという点です。

 

(RE版) 真偽 (VR版) 真偽

(『都市』収録のREGENERATE版と『都市Ⅱ』収録のVIRTUAL REALITY版、
それぞれのバージョンの『真偽』。
VR版の主題歌はすべて『REGENERATE』とは別のアレンジになっている)

 

 壮大で広がりがある仕上がりにしたいなと思いまして、全体的にストリングスの生アレンジをすごく増やしたり、オーケストラテイストを強くしたりしています。
『REGENERATE』版はバンドテイストにオーケストラが混ざっている風だったんですが、VR版に関しましてはもともと少しオーケストラ的な雰囲気があったので、そこからさらにというのも変化がなかなか難しい部分でした。
 ですが一番制約があったのは、ゲーム内での用途が同じなので尺もテンポを変えられない、という部分です。そういう制約がある中で、もともとオーケストラのような雰囲気だった曲に、どれくらい差をつけられるかというところが自分の中での課題でした。

 

――どういった部分で差をつけられたんですか?

 

朝比奈氏:
 できる限り大きく壮大に、広がりを作ってあげようと思ったので、ギターだったパートをストリングに変えたりといった部分で差をつけました。
 『流転』に関してはもともとバンドのドラム風だったものが、完全にスネアのマーチングになったことで、オーケストラのコンサート風に変化しています。
 一番難しかったのが『神話』です。というのも、『神話』はもともと激しい曲でしたから。ですが、それに負けないくらい激しくという前提があったので、最初から飛ばすしかないなと。『神話』のイントロピアノもストリングももともと壮大でしたが、さらに煽らせていただきました。
 ここで一番違ってくるのは『反逆』だと思いますが、『REGENERATE』ではこの曲だけアレンジが香椎モイミさんなんです。他の4曲は私がアレンジしたものをまた自分でアレンジしたんですが、『反逆』だけは香椎モイミさんがアレンジしたものを、VR版で私がアレンジしました。要はアレンジ者が違うので、この違いを見ていただきたいと思います。

 

――『反逆』はおっしゃる通り、VR版と『REGENERATE』版で全く違いますね。

 

朝比奈氏:
 『都市Ⅱ』を聞いた時に、「『反逆』は全然違うな」という声が絶対にあると思います。
それはやはりアレンジする人が違うからで、そうなると余計にカラーが変わります。
 香椎モイミさんの曲を朝比奈がアレンジするとこうなるんだよ、本人がアレンジするとこうなるんだよ、というこの差については、観測者の方が見るには面白い視点かなと思います。なので、ぜひチェックしてみてください。

 

(RE版) 反逆 (VR版) 反逆

(REGENERATE版の『反逆』とVIRTUAL REALITY版の『反逆』)

 

 それから5曲の共通点として、作曲された他人事さん、Neuronさん、tokiwaさん、廉さん、それから香椎さんは、皆さん自分でアレンジされる方たちなんです。なのでおそらく、アレンジャーが入るケースが少ない作曲家さんたちだと思います。
 特にボカロPなどをされている方は自分でアレンジをすることが多いので、そういう中で今回全部を私がアレンジさせていただいたことで起きた化学反応といいますか、ご本人たちが「自分でアレンジするならこうしただろうな」と思っていた部分と、私がアレンジしたものの差というものは見ていて面白かったのではと思います。
 その中でも廉さんだけはいろんな作品でご一緒しておりまして、『カードファイト!!ヴァンガード』のテレビアニメのオープニングの『切札』などは、廉さんが作曲で私がアレンジを担当しています。他にも協奏曲の方でも一緒に演奏するなどして、今まで5作品ぐらい一緒に作っているんですが、いつも言われるのが「ストリングとかオーケストラの発想がやっぱりちょっと違う」ということです。
 廉さんはギターを弾いたりと結構バンド系の方なので、「ロックのイメージで作ったものを朝比奈さんがアレンジすると、ちょっと違う感じなのが面白い」とよく言ってくださいます。

 

【Original MV】切札/ V.W.P #15【拡声曲】

(廉氏が作詞作曲、朝比奈氏がアレンジを担当された『切札』のMV)

 

――朝比奈さんがおっしゃる通り、今回のVR版のアレンジはVRという一つのユニバース、神椿市という世界を作ってそこで物語が展開していく、その世界観の膨らみに合わせたような、本当に壮大なアレンジになっていることが多いです。
 また朝比奈さんのアレンジに合わせて、使うシーンを『REGENERATE』から変えているものもあります。それだけ作品に合わせて素晴らしいアレンジをしていただいているので、ユーザーさんにはぜひご注目いただければと思います。

 

 

◤◢◤ 力を入れた所や見どころについて◢◤◢

 

――今のお話の中で語られた部分もあるかとは思いますが、本作の楽曲制作で朝比奈さんが特に力を入れた点、見どころなどについてお聞かせください。

 

朝比奈氏:
 主題歌・挿入歌のアレンジとBGMを両方同時にやれるというのがあったので、このBGMと歌もののつなぎ方といいますか、いかにそれを一つに溶け合わせるかという部分は、特に力を入れさせていただきました。
 例えば『都市Ⅱ』のアルバムを聴いていただく際に、1曲だけがインパクトのある主題歌という感覚よりも、1番から5番までを通して聴いてもらった時に、1つの映画のようなものを見終わった感覚になっていただけるような工夫をしています。
 それはBGMも同様で、サントラを全部聴いてもその感覚があるように意識して作っていました。歌ものもBGMも全部含めてそれをテーマにしましたので、やっぱりそこが一番力を入れたところだとは思っております。

 

――本作は観測室というユーザーのユーティリティ空間の中で、作中の楽曲を聴くことができます。主題歌5曲はクリアした段階で聴けるようになっておりますので、プレイ後のお楽しみとしてぜひ順番に聴いていただき、朝比奈さんがそこに込められた物語を感じ取っていただければと思います。

(本作のユーティリティー空間『観測室』。
クリア後にはぜひ、観測室で主題歌5曲を続けてお聴きいただきたい)

 

 

◤◢◤ ここだけの話◢◤◢

 

――それでは、何か苦労話や打ち明け話などはございますか?

 

朝比奈氏:
 実は一つありまして、ゲームの音楽をこれだけ長い期間かけて作ったのは、初めてだったんです。今回は2年3年がかりで作っているので、最初に作った曲と最後に作った曲が2、3年離れておりまして。
 普通なら例えば2ヶ月間ゲームの世界に入り込んで、自分はこのゲームの住人だという気持ちで一気に作り上げてしまうことが多いんです。
 ですが今回は「2年前、3年前に作った曲はどういう気持ちで作っていたのか」と思い出しながら作るので、そこで若干時間がかかったなと。
 これだけ長い期間のかかった作品がやっと世に出たというところで、やっぱり自分の集大成が出た喜びがあります。

 

――確かに、すごい長期間のお付き合いになりましたね。その他には何かございますか?

 

朝比奈氏:
 長く作っている間に、同じ神椿でいろんな作品を同時に作っている時があるので、そこの気持ちの切り替えで少し苦労したところがありました。
 ヰ世界情緒さんのアイドルのゲーム(『Project canvas 〜ヰ世界情緒育成計画〜』『Virtual Ties~ヰ世界情緒夢想曲~』)に、春猿火さんのホラーゲーム(『春琉ト怪夜』)、あとは『神椿學園新聞部』ですとか、神椿のゲームだけでも色々作ってきていて、しかもゲームによってテーマが全然違います。それに加えて同じ神椿のキャラクターが出てくるというところで、なかなか混乱してしまうんです。
 例えば『神椿學園新聞部』は、8bitサウンドで全部チップチューンなんです。一回チップチューンが入ってくるとそっちに持っていかれそうになったりするんですが、あのチップチューンと本作の楽曲では、作る時の気持ちがちょっと違ってきますので。

(KAMITSUBAKI STUDIO関連のゲームの数々。
朝比奈氏はこれらのタイトルの音楽にも関わられている)

 

 

◤◢◤ まとめ:皆さんへのメッセージ◢◤◢

 

――最後に、インタビューを読まれる方に向けてのメッセージをお願いできますでしょうか。

 

朝比奈氏:
 神椿の世界観は、本当に奥が深いと思います。色々な伏線があったり、様々なものが絡み合っていたりしますし、ゲームとライブが連動してきたり、そこにまたアニメが連動してきたり、小説があったりして、神椿の作品は全部で一つの作品なんだと思います。
 なのでぜひ、このゲームをきっかけに神椿の世界を色々見ていただくと、ゲームがより深く理解できて楽しめるかなと思っております。

 

――朝比奈さんの音楽は単体で素晴らしい作品であると同時に、作品の格を大きく上げてくださるものだったと思っております。それでは、本日は誠にありがとうございました。

 

 

◤◢◤ 朝比奈健人氏ディスコグラフィー from『神椿市建設中。VIRTUAL REALITY』◢◤◢

 

最後に、本作で朝比奈氏がご担当された楽曲を、一覧でご紹介させていただく。

 

  1. 観測 -Observation Room-
  2. 陽光 -Sunlight Way-
  3. 平穏 -​Calm Place-
  4. 夜想 -Moonlight Nocturne-
  5. 解放 -Time for Liberation-
  6. 日常 -​Peaceful Days-
  7. 不吉 -Ominous Shadow-
  8. 作戦 -Tense Briefing-
  9. 悲嘆 -Tears of Her-
  10. 追憶 -Reminisced Memory-
  11. 前進 -Go Ahead-
  12. 神秘 -Mystical Precept-
  13. 対峙 -Confronting the Threat-
  14. 疾駆 -Run and Action-
  15. 不可説 -Battle on Kafu-
  16. 幻傷 -Battle on You-
  17. 反撃 -Strike Back-
  18. 崩壊 -Collapse of Real-
  19. 夕景 -My Beloved Town-
  20. 街燈 -Bright Street-
  21. 活郷 -Chaos and Vibrancy-
  22. 寂寞 -Fog of Loneliness-
  23. 科技 -Scientific Fortress-
  24. 薄闇 -From Dusk-
  25. 暗黒 -Never Dawn-
  26. 夏色 -Summer Scenery-
  27. 想念 -Voice of Soul-
  28. 星影 -Starlight Determination-
  29. 憂愁 -Melancholic Smile-
  30. 探索 -City Explorer-
  31. 緊迫 -Emergency Facts-
  32. 危機 -Fatal Crisis-
  33. ネクロマンス -Battle on Rime-
  34. トーテミズム -Battle on Haru-
  35. Psyche -Battle on Sekai-
  36. ENEMY -Battle on Koko-
  37. 変身/青雀 -Kafu’s Awakening-
  38. 変身/幼年期の終わり -Rime’s Awakening-
  39. 変身/九紋龍 -Haru’s Awakening-
  40. 変身/Heliotrope -Sekai’s Awakening-
  41. 変身/アルナイル -Koko’s Awakening-
  42. 変身/花魁鳥 -Witches Awakening-
  43. 開演:不可解 -Story of Kafu-
  44. 開演:ニューロマンス -Story of Rime-
  45. 開演:シャーマニズム -Story of Haru-
  46. 開演:Anima -Story of Sekai-
  47. 開演:PLAYER -Story of Koko-
  48. 開演:神椿市建設中。 -Story of Us-
  49. 物語 -Our Stories-
  50. 真偽 -Instrumental-
  51. 反逆 -Instrumental-
  52. 決意 -Instrumental-
  53. 神話 -Instrumental-
  54. 流転 -Instrumental-
  55. 境界 -Boundary Verse-
  56. 宿命 -Against Fate-

 

(インタビュアー:月島総記 / 記者:風雅宿)

【インタビュー記事】背景チーム様

2026.04.23

【前書き】

 『神椿市建設中。』シリーズ最大規模の物語となるVRアドベンチャーゲーム、『神椿市建設中。VIRTUAL REALITY』を手がけたクリエイターの方々から、本作を巡る様々な想いについて伺っていく本インタビュー。
 第四回は背景チームから、背景監督の藍上アオイ氏、プロデューサーの渡邊竜実氏、コンセプトアート・CG背景制作を担当されたBenjamin Round氏のお話を伺った。

 

◤◢◤ 自己紹介 ◢◤◢

 

――開発者インタビュー第3回は、本作の作中世界を作っていただいた背景チームの皆さんにお話を伺いたいと思います。まずは、ご経歴や自己紹介からお願いいたします。

 

渡邉竜実氏(以下、渡邉氏):
 じゃあ、アオイさんからお願いします。

藍上アオイ氏(以下、アオイ氏):
 藍上アオイ(あいうえあおい)と言います。『VRChat』というVRSNSをきっかけに、趣味で3DCG制作や背景制作をやっている中で、Eallin Japan代表の笠島さんに見つけていただきました。
 そこからCIELさんのバーチャルライブ、そして去年1月の花譜さんの4th ONE-MAN LIVE『怪歌』のオープニング映像で、川サキさん(花譜さんの動画・MVなどに関わられているEallin Japan様所属の映像ディレクター)のディレクションのもと、3D背景制作などに携わらせていただくことになりました。
 もともとリアルの方でフェスの運営をしていたこともあって、空間や導線設計などもよく考えていたので、その辺りも今のお仕事にはプラスに働いているのかなと思っております。よろしくお願いいたします。

渡邉氏:
 アオイさんには今回、VR背景ディレクターをお願いしました。
 背景モデル制作時には、まずコンセプトアートを描いてからモデル制作を進めます。
 まず弊社のベンジャミン(Eallin Japan)がほぼ全シーンのコンセプトアートのベースを作り、それをpHstudioさんに仕上げていただいております。ベンジャミン、自己紹介お願いできますか?

Benjamin Round氏(以下、Benjamin氏):
 ベンジャミンと申します。ニュージーランド出身で、2年前に日本に来ました。
 日本に来る前、ニュージーランドでは2年くらいCG背景を作っていました。アートフィルムとか、もっと実写っぽい、フィルムみたいなリアリスティックなCGを作ったりですね。
 色々勉強した後にEallinに来て新しいスタイルを勉強して、今はデザインや背景、CGといったクリエイティブなデザインを色々とやっています。

渡邉氏:
 今、アニメ背景もやってるよね。

Benjamin氏:
 はい。本作ではコンセプトアートやCG背景を作ってました。よろしくお願いします。

渡邉氏:
 ベンジャミンはボス戦のCG背景制作も担当しています。
 じゃあ、僕も。Eallin Japanの渡邉です。今回プロデューサーという立場で入っておりますが、プロデューサーもCGディレクターもしますし、自分でモデリングもアニメーションもします。今回も一部のシーンですが、背景制作もしています。プロデューサー兼一部背景制作という形で参加させていただきました
 元々は放送局でバーチャルスタジオのスタッフとして仕事を始め、それからドラマやバラエティ、ニュース、映画等のCGを制作していました。Eallinは立ち上げから所属して、CMやMV等制作しています。
 花譜さんが活動し始めた初期の頃からCGで協力しておりました。なのでこの間まで中学生だったのに、もう成人していらっしゃって不思議な気持ちになっています(笑)。

 

 

◤◢◤ 本作の背景制作を行う事になった経緯 ◢◤◢

 

――皆さんが本作の背景制作を行うことになった経緯について、お聞かせください。

 

渡邉氏:
 神椿さんには、花譜さんの初期のミュージックビデオから制作協力をさせていただいてました。今でも花譜さんだけに限らず、V.W.Pさんのミュージックビデオだったり、映像周りやライブ周りだったりもお手伝いさせていただいております。

『ゲシュタルト』MVの他、様々なMVやライブ、映像にEallin Japan様は関わられている)

 

 それでTHINKRさんから、「今回のゲームの背景、Eallinさんの方でやっていただけないか」というご相談を受けたんですね。通常のゲーム背景とはまた勝手が違うので、やっぱりVR周りの見せ方が上手な人をディレクターに立てた方がいいな、ということでアオイさんに相談してアサインしました。

 

――基本的なところをお伺いする形になってしまうんですが、ベンジャミンさんはEallin Japanさんの所属で、アオイさんは個人で活動されているような形ででしょうか。

 

渡邉氏:
 そうですね。今回の案件の前にCIELさんのVRライブでアオイさんに背景を作っていただいたんですが、それがとても良かったんです。それでうちの笠島が、「アオイさんがディレクターでいいんじゃないか」と。
 弊社では笠島が一番VRに明るくて、VRメインでちゃんとディレクションやワールドを作れる人間がいなかったんですね。それで「アオイさんの方が多分いいものになるだろう」ということで、アオイさんにお願いすることになりました。

アオイ氏:
 この業界でのディレクターは初めてだったので、色々な重みを感じながらお引き受けしたのを覚えています。

 

――特に今回は、2段階に分けて依頼させていただいた形だったかと思います。最初は既存の背景の修正やご意見伺いをお願いして、その後で改めてご依頼させていただく形でしたよね。

 

アオイ氏:
 はい、その通りです。2年前、東京ゲームショウの出展に伴って湾岸道路を出すからということで、現行のものを拝見したんです。それで、「こういうことを意識すると、もっとVRで違和感なく楽しめるのでは」という資料を作成したことを覚えております。

 

――東京ゲームショウの湾岸道路というと、この背景ですね。こちらはアオイさんがフルに作られたんですか?

 

(東京ゲームショウ2023版の湾岸道路)

 

アオイ氏:
 モデルの一部は作成、また手直し等していますね。デザイナーにはベンさんとはまた別の方が当時入っていて、テクスチャーはそのデザイナーの方にお願いしました。あとは、今日はいらしていないテクニカルアーティストのAyanoさんがセットアップしてくださった、という形ですね。
 2年前にこういったスポットでのお手伝いをした結果、その1年後にゲーム全体の背景、ディレクションをEallinさんにお願いしたいというお話がTHINKRさんからあり、そこでEallinさんからディレクターを自分に依頼していただいた、という流れかなと思います。

 

――今回46エリア、実際には約55エリアほどになりましたが、ここまで大量の背景を使うVRゲームはおそらく滅多にないと思います。この物量を依頼された時のアオイさんやEallinさんサイドの、最初の頃の状況をお聞かせ願えればと思うのですが。

 

渡邉氏:
 確かにシーン数が多かったのですが、ボリュームがあったとしても工程自体はそこまで複雑なものではないので、ちゃんと計画通り進めればそんなにトラブルは起きないだろうと思っていました。
 月島さんに作っていただいた上面図をベースに、アオイさんにラフでレイアウトを組んでいただいたりしていたので、実際に作るところに関してはかなりスムーズに進んでいったんじゃないかなと思います。

 

――あの物量かつ色々な方が関わっている状況で、全く遅れず予定通り進行されていることにかなり驚くと同時に、頼もしいなと感じていました。それで常にTHINKRさんには、「Eallinさんは心配ないです」とお伝えさせていただいておりましたね。

 

(零番街をはじめとした膨大な量の3D背景を、Eallin Japan様はまったく遅れることなく制作されていった)

 

渡邉氏:
 よかったです。プロデューサーとして、そういうふうに褒められることってあんまりないので(笑)。でも今回、アオイさんがディレクターだったからすごくやりやすかった、というのはありますね。ディレクターはスケジュールとか予算とか、気にしない方も多いので(笑)。
 アオイさんはそういう面でもすごく協力的だったので、とてもやりやすかったです。

アオイ氏:
 僕、これが渡邉さんと初めてのお仕事でしたよね。だから渡邉さん的には、「藍上アオイはどんな人間なんだろう」という気持ちのままスタートを切ったと思うんですが、そう思っていただけたのであればよかったなと。

渡邉氏:
 うちにはちょっとなかなか、制御が難しいメンバーも居るので(笑)。

アオイ氏:
 それはいいところでもあると思います。自分は実写映像制作のADやリアルイベントの制作進行的なことを元々やってたので、どうしても資料管理、スケジュール管理というのがプライオリティ高めになっているところがあるんですよね。

渡邉氏:
 正直、アオイさんはディレクターより、プロデューサーの方が適性があるんじゃないのかなと思いました(笑)。

アオイ氏:
 でも、これは最近思うこと(プロデューサー的な立場に関わったりしながら)なのですが、ディレクターをしながら細かく切り詰めていく方がやっぱり得意かもしれません。

渡邉氏:
 こんなにしっかりした人は、本当に久しぶりでした(笑)。資料の作り方もすごく丁寧でしたし。

アオイ氏:
 最初はやっぱり60近いシーンはちょっと未知数だったので、途方に暮れていたんですよ。でも、こういうのもちゃんと分解していくとうまくできるな、というのを改めて感じました。最初の50~60シーンと聞いただけだと、ちょっとクラクラしたんですけど(笑)。
 渡邉さんがスケジュール制作ラインを複数設けて、月島さんと話して資料を作って、ベンさん、グレーモデル、制作会社さんがモデリング、それからAyanoさんが組み込むまで、1シーン大体2〜3週間ぐらいでしたっけ?

渡邉氏:
 1シーンは3〜4週間という感じですね。軽いところは3週間ぐらいです。

アオイ氏:
 そうですよね。それがちゃんとできるものなのだな、と改めて思いました。

 

 

◤◢◤ 本作の背景制作の進め方 ◢◤◢

 

――それでは今作の背景制作の進め方について、いろいろとお話を伺っていきたいと思います。まず第一の資料として背景制作指針という資料があり、過去の神椿作品のビジュアルを挙げていき、アオイさんと突き合わせしながら本作の方向性を探っていった、というのが今回の流れになります。

 

(過去作品のビジュアルの一例。上:V.W.P『電脳』キービジュアル 下:本作のプロトタイプ『神椿市工事中。』イラスト)

 

――いろいろと資料提供させていただいたうえで、東京ゲームショウ2023のためにアオイさんが作ってくださった背景資料が決め手となって、本作の背景の方向性が決まりました。あちらはアオイさんが作られたんでしょうか?

 

アオイ氏:
 資料は私ですが、デザインはデザイナーさんに入っていただいてました。その後、結局本編には関わることができなかったんですが……。

 

渡邉氏:
 けろくんという方が居まして。

 

――その方はEallinさんの所属だったんですか?

 

渡邉氏:
 いえ、学生だったんですよ。今は院に進まれています。

 

――けろさんのおかげで方向性がだいぶ見えたかと思います。

 

??:
 屋外の背景については街区ごとの空気感について話した後、各街区ごとに過去作の色々なビジュアルをご覧いただいて、それを形にしていく。そういう流れで、本作の一番最初の部分は始まったことになります。
 制作の最初の工程として、まずこのように上面図というものを描かせていただいていました。

(月島が用意した背景上面図。画像は観測室のもの)

 

――これをもとに、次のようなアオイさんの詳細な資料ができていくわけですね。

 

(上面図をもとにアオイ氏が制作した、観測室背景の詳細資料)

 

――この資料というのは、資料が先にあってコンセプトアートがハマっていく感じだったんでしょうか。それともコンセプトアートが先にあって、資料をそれに合わせて作っていったんでしょうか?

 

アオイ氏:
 順番としては、月島さんとの定例で次のシーンの説明を受けた後、まず私の方でいったんグレーモデルと資料を同時に作っていました。
 ベンさんにはグレーモデルの特定のアングルのスクショをお渡しして、あとは資料内にいろいろ文言で補足を入れて、そちらを参考にコンセプトアート用のラフをを描いていただく…という流れです。

 

――グレーモデルについて、ご説明いただいてもよろしいですか?

 

アオイ氏:
 言い方は結構業界の界隈によって違うらしいんですが、仮のレイアウトのことですね。オブジェクトのディテールを詰めず、色テクスチャやマテリアルも当てない状態で、サイズ感や場所、アングルと見え方といったところをいったんラフで詰める、下書きのようなものですね。
 それを月島さんに一度ご確認いただいて、大枠の問題がなければ次の工程に進む、という形でやっていたかなと思います。

渡邉氏:
 はい、アオイさんからいただいたグレーモデルから、ベンジャミンの方で一回ラフを描き起こす(コンセプトアートを描く前に)という作業があります。

 

――順序としましては、まず上面図をアオイさんにお見せして、どういう背景なのかご説明をさせていただく。そしてアオイさんが先ほどご説明のあったグレーモデルを、それからこのような資料を作っていただき、ベンジャミンさんにボールが渡されるという形ですね。

 

(アオイ氏の観測室のグレーモデル資料)

 

――そこから先はまずコンセプトアートのラフを作っていただき、そして着彩された完成版のコンセプトアートになっていくという流れでしたね。

 

(ベンジャミン氏に描き起こされた観測室のラフ)

(コンセプトアート担当により着彩された観測室のコンセプトアート)

 

アオイ氏:
 グレーモデルもなんですが、さっきの資料の後ろの方に行くともっとリファレンスがいっぱいあって、それを説明した上でベンさんに描いていただいていました。

(観測室資料のリファレンス)

 

 

◤◢◤ コンセプトアートについて ◢◤◢

 

――今回、背景制作の工程の中で方向性を決めたのは、常にベンジャミンさんの描かれてきたコンセプトアートでした。本当に色々な背景のコンセプトアートを、そして背景そのものを作っていただいたと思いますが、いかがでしたでしょうか。ベンジャミンさんのお話や、ご感想をお聞かせいただければ幸いです。

 

Benjamin氏:
 毎週アオイさんと渡邉さんから色々なシーンの説明をもらって、そこから面白いコンセプトを作ろうとしていました。難しかったのは、全部のシーンそれぞれが同じ世界観なことや、面白いオリジナルデザインを作るといった部分ですね。
 最終的に、ラフスケッチなのでデザインだけに集中することにしました。

渡邉氏:
 補足すると、ベンジャミンには当初はコンセプトアートの完成形まで描いてもらっていたのですが、作業効率&スピードを上げるためにベースのラフをとにかく描いてもらおうということにして、仕上げはpHstudioさんで仕上げていただく、という流れになりました。なので、ベンジャミンがラフまで仕上げて、それをpHstudioさんにお渡しして、実際の色付けだったりはそちらでやっていただくという形で進めておりました。
 最初はラフの段階から直接pHさんにお願いしていたんですが、社内で小回りの聞く人間がアオイさんと直接やり取りして進めた方がレスポンス良く進行できるので、そういう座組になりました。

 

(本作のコンセプトアートは、全てBenjamin氏がラフを描かれている)

 

――一人のイラストレーターさんに全てのコンセプトアートをお願いすることで、色々なシーンのある作品の世界観に統一性をもたらそうとしていただいたんでしょうか?

 

渡邉氏:
 そうですね。物量的に色塗りまでは一人でやりきれなくても、ベースのデザインとレイヤーとをベンジャミンで統一すれば、世界観としてはそんなにブレなくなるかなと。

 

――非常に効果的な手法だったと思います。おかげさまで本作は、メインヒロインとなるV.W.Pの皆さんそれぞれの楽曲の世界観がそれぞれの街に表れた、個性豊かだけども全体としては非常にまとまりのある形になったと思います。

 

渡邉氏:
 番街ごとに世界観が違うんですよね。これはわりと最初の方にアオイさんとお話したんですが、CGを作る場合においても、担当する会社さんを番街ごとに変えるのはどうだろうかと。
 例えば壱番街は全てこの会社さんでという風にして、同じ壱番街の中でばらつきがあまり出ないようにと、そういうアサインの仕方にしておりました。
 大きい会社であれば、社内でまとめてばらつきが出ないような座組にできたとは思います。ですが今回の物量とスケジュール的に、複数の協力会社さんにお手伝い頂く必要がありました。そうなると、どうしてもテクスチャの描き方などで会社さんごとに少し差が出てしまうと思い、各番街ごとに担当する会社さんを変えて制作しました。

 

――各アングルごとのコンセプトアートをベンジャミンさんに作っていただいた後、そこから先の工程についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

 

渡邉氏:
 基本的には毎週数枚コンセプトアートを描き、それと同時にアオイさんが作られた資料をもとに、背景モデリングチームと打ち合わせをして制作を進めていきましただいたい2週間ぐらいで一度チェックして修正して、またその1週間後にだいたい出来上がったものが上がってきて、というペースでしたね。
 その辺りはアオイさんは最初はどうでしたか? 今回いろんな会社さんにお願いしてみて、色々あったと思いますが。

アオイ氏:
 コミュニケーションを会社さんごとに変えなきゃな、というところに途中で気づきました。例えば「キャラクターに対してリアル感のあるスケールで」という表現でOKなところもあれば、かなり厳密に高さを指示した方がいいところもあったので、相手によって相談の仕方を変えなきゃなと思ったんですね。
 あとは3シーンほど自分の方でモデリング含め作ったシーンがあります。「観測室」「工業地帯」「港湾倉庫」ですね、。その中でも「港湾倉庫」はCIELさんのVRChatライブの時に自分がデザイン含め作ったものでもあったので、そのおかげですごくスムーズにできました。

(CIELさんのライブで使われた伍番街水門管理局のモデル。こちらはアオイ氏がリードモデラーとして制作された)

 

 逆に言うと、自分は今までデザインやモデリング含め背景制作をしてきたことはありましたが、ディレクションに集中したのは本作品が初めてです。なので、そこは正直勉強しながらでした。このプロジェクトはかなりロングスパンだったので、そのうちにどんどんやり方やペースがつかめてきて、終盤はすごくスムーズにいったのかな、という気がしています。

 

――通常の背景については、作劇上の理由で入れなければならない要素がたくさんあったと思います。その辺りはご苦労されませんでしたか?

 

アオイ氏:
 ちょっと時間が空いて感覚が薄れてるんですが、めちゃくちゃ困ったことはなかった気がします。月島さんとちゃんと定期的に打ち合わせができて、意志疎通もできていましたし、認識の齟齬やすれ違いもあまりなかったかなと思いますね。細かいところは打ち合わせで微調整しつつですが、大きくずれているということはなかったので。
 あとは月島さんと毎週長時間、長い時は5時間とか打ち合わせしていたんですが、早く終わった時は雑談もしていましたよね。好きな映画や漫画、ゲームの話もして、結構見てる世界観というか、触れてきたコンテンツに近しい部分があったじゃないですか。
 小島秀夫監督作品の『ポリスノーツ』とか『逆転裁判』とか色々話しましたね。、『ステラーブレイド』の話の流れで軌道エレベーターが好きって話をしたら『銃夢』をお勧めしてくださったり(笑)。そういう意味でも近しい方向を向いていたのも、やりやすかったところかなと思っています。

 

――背景を制作するリソースも無限ではないので、見えないところは隠すなどして、あまり作り込まないようにしていたと思います。そうでありながら本作はアクションが多く、怪異も発生するので、キャラクターはかなり動き回るわけですね。
 にもかかわらず、本当にいろんなことを要求させていただいてしまったわけですが、コミュニケーションが円滑だったから問題なくやれた、ということでしょうか?

 

アオイ氏:
 ひとつには、それがあると思います。あとは本作の特徴として、自由歩行はできないじゃないですか。プレイヤーポジションが複数個あって、そこから見た景色を詰める方式なので、逆に言えばそれ以外のところはなるべくリソースを割かず、モデルは見えるところをなるべく重視して作る。
 そういうところもわかりやすく明確だったので、やりやすかったというのはあるかもしれないですね。自由歩行だとそうもいかないので。
 要は全方向のゲームだと、「ここに立ってこう見たとき、一番きれいに見えてほしいな」と思っても、意図的にプレイヤーをそこに立たせるのってなかなか難しいと思うんです。特殊なイベントを起こすとかじゃないと。
 でもこのゲームはもう立っている時点でその景色なので、そこでの絵作りを意識すればよかったというのは、結構やりやすかったところなのかなと思います。

 

――それは結構本質的かもしれないですね。本作は故もの久保先生の描かれた一番最初期の神椿市のビジュアル、特に零番街に関してはこれらを出発点として、「この世界を実現させよう、実際に3D化していこう」という流れで始まっていったと思います。

 

(故もの久保氏が描かれた零番街のイラスト)

 

――そうして出来上がったものは、本当にかつて描かれた神椿市の風景が3D化されたものだと思います。画角もかなり計算されていて、「この位置に立ってこの方向を見ると、MVのあの場面になる」というシーンをたくさん出していただきました。

 

アオイ氏:
 それはかなり意識していて、百貨店『PILGRIM』最上階とかは相当こだわったかなというところではあります。ちょっと後ほど、技術面や苦労話の時にまたしたいなと思います。

 

――アオイさん側から「こういう風にしたら、MVのこのシーンになりますよ」とご提案いただいたことも、たくさんありましたね。

 

アオイ氏:
 自分もMVを結構色々と見ていたので、観測者の皆さんの視点だとここの画角だと嬉しいかな、とか。そういったものを、なるべく取り入れられたかなと思っています。

 

――一方で、不可解空間についてはいかがでしょうか。イマジネーション重視で作っていただいたのかなと思いますが、通常背景とは違っていたんでしょうか?

 

アオイ氏:
 まず、足場問題が結構あったなと思います。色々な状況で不可解空間に入り込むと思うんですが、元の空間にあった船や列車が残るパターンもあったり、空中に浮遊しているパターンもあったり。その場合は落ちてしまうので魔法陣で足場を作らないといけなくなるんですね。
 あとは全体的にのっぺりしないように、プレイヤーの下方に時空の裂け目的な穴を作ったり、排水溝のようなイメージで時空の裂け目に色々詰まっているような形にしたりしました。
 ここで結構難しかったのが、不可解空間はボスの動きに依存しているというところですね。ワークフロー的にボスと背景のどちらか一方から進めるというわけにもいかなかったので、ある程度ボス戦のアクションが詰まったら、フィードバックをいただいて修正して……というのはありましたね。

 

――不可解空間に関してですが、ベンジャミンさんがコンセプトアートだけではなく、実際のモデリングなど全て担当されているものもあるかと思います。ベンジャミンさんは、イラストもCG制作もどちらもいける方なのでしょうか? その辺り、ベンジャミンさんが作られた不可解空間について、お話しいただければと思います。

 

Benjamin氏:
 CGもペインティングも使ってます。ボス戦はコンセプトアートとCGのスカイボックス(Unityにおける背景を設定をする機能)をやって、面白かったけど難しかったですね。VRで周りが全部見えるから、スカイボックスを360°自作したりとか。

渡邉氏:
 ベンジャミンは2Dと3D両方使います。我々もベンが作ってきたボス戦の背景初稿を見て、結構「おおっ」てなることが多かったんですよね。
 ボス戦ではベンは360°のスカイボックスを描いてアニメーションさせているんですよね。なので、あぐに戦のスカイボックスを走るラインみたいなものなども、ベンがうまいことUV(※)を使ってアニメーション作っていたりします。
 ボスが2体出てくるところのスカイボックスは初稿見て、「うわ、すごいかっこいい」となりました。コンセプトアートより、むしろ良くなってるなという。その辺りはやっぱり2Dも描けて3Dの知識もないと、ちょっと作れないなというものだと思っています。
※3Dモデルにテクスチャを貼り付ける際に使用する座標系のこと。この座標を動かすことでアニメーション表現ができる。

 

――はすたー戦以外の不可解空間は、全てベンジャミンさんが制作されたんでしたっけ?

 

アオイ氏:
 そうですね。はすたー戦だけは、前のけろくんとAyanoさん、プロデューサーの笠島さん(Eallin)で作成しています。もしかしたらこちらのはすたー戦が最初にできたシーンかもしれませんね。東京ゲームショウ2023の際に詰めていたんです。まだ我々が本アサインされていなかった頃です。

 

――不可解空間は各MVの世界観をモチーフに作られているんですが、V.W.Pの皆さんもやはりその部分で「わっ」となるようでした。

 

アオイ氏:
 不可解空間は例えば『糸』だと川サキ(Eallin)さんですし、『百花繚乱』だと玲架さん(『百花繚乱』他、多数のMVやライブに関わられているCGアーティスト)がディレクションされたMVがベースになっていると思うんですが、やっぱりMVの特徴はしっかり残したいので、モチーフなどはふんだんに使わせていただきながら進めていました。

渡邉氏:
 個人的には見所はベンが制作したスカイボックスですね。これは僕が作れと言われても、なかなか難しいかもしれません。

アオイ氏:
 結局一番面積占めるのって空なので、そこがチープだったり平坦だと、一気に絵がつまらなくなると思うんです。でも今回はベンさんのスカイボックスがあるおかげですごい絵として締まったし、世界観も作られたので、本当に助けられた部分が大きいなと思います。

 

――そういう形で出来上がった不可解空間が、こちらになります。

 

(完成版の不可解空間。画像はあぐに戦のもの)

 

渡邉氏:
 すみません、ひとつ補足いいですか。基本的に3Dのモデルが全部あがった後は、Ayanoさんという方にお渡しして、各時間帯やブラックアウト版のライティングをしていただいております。

アオイ氏:
 処理の最適化もですね。

渡邉氏:
 3Dモデルそのままだとやや不安になるのですが、ここでライティングしていただくことで、「いけるな」と安心できる段階になるんです。
 お忙しいようで本日参加できなかったので、ちょっとここでAyanoさんのことにも触れておきたいなと思いました。
 アオイさんからも、何かAyanoさんについてのお話ってありますか?

アオイ氏:
 次の話あたりで言おうかな、と思ってたことなんですが。
 背景を作った後に色んなキャラクターやエフェクトが入ってくることもあり、今回やっぱり制限がどうしてもあって。テクスチャーに関しても全て一枚で、ノーマルマップ(3Dモデル表面に凸凹などを疑似的に表現する技術)やラフネス(3Dマテリアル表面の荒さを表現する値。表面の光沢に関わる)で凹凸感やテカリを出せるものではあるんですが、今回は全部ベースカラーのみなので、どうしても立体感が出しづらいところがあったんです。そこにAyanoさんのライティング、濃淡や明暗で立体感がすごい出たと思いますし、本当に助かりました。
 あと病室や灯台や音楽室のような狭いところに関しては、ふんだんにマテリアルやポリゴンを使ってクオリティを上げられたんですが、陸番街の水没地区なんかはかなり広大で、節約しながらやっていかなきゃいけなかったんですよ。その辺りはモデリング担当も大変でしたし、処理的なところでも広いとそれだけ重くなるので、Ayanoさんにそういったところの最適化などもご尽力いただいて、とても助かりました。
 もうひとついいですか。月島さんも自分もなんですが、どうしてもこだわりたかったのは、やっぱり百貨店最上階ですよね。理芽さんの『PILGRIM』がモチーフの。本作では鏡面やミラーのような表現は一切できなかったんですが、どうしてもここはこだわりたかったんです。やっぱり『PILGRIM』の印象的なところって、地面に反射してモニターや柱が映るところだと思ったので。
 なのでここは地面の下にもう一個、面対称でまったく同じものを配置して、地面が半透明になっていることで、あたかも反射してるかのように見せるということをしていました。
 というのを無理やりというか、ここだけでも是非と無理言って実装しました。これがあるとないだとだいぶ違うので、ここは頑張って入れてもらいました。

(他ならぬ理芽さんも感動された、アオイ氏こだわりの百貨店最上階)

 

 

◤◢◤ 本作で特に力を入れた部分、見どころ ◢◤◢

 

――本作で特に力を入れていただいた部分、見所というのを思い思いに語っていただければと思います。

 

アオイ氏:
 ひとつはやっぱり、『PILGRIM』のシーンですね。あとは自分がモデルを担当した部分にはなるんですが、伍番街ですね。CIELさんのVRChatライブでやらせていただいたんですが、伍番街がちゃんと出たのって、その時が初めてだったんでしたっけ?

 

――そうですね。伍番街と銘打たれた背景が出てきたライブは、あの時が初めてでした。

 

アオイ氏:
 そうですよね。今だと零番街、参番街とか壱番街もですが、色々な作品やバーチャルライブに出てくるので、どうしてもそこに合わせてって感じになっちゃうと思うんです。
 でも伍番街に関しては、CIELさんのライブがほぼ初めてということで、割と自由にやらせていただきました。

(CIELさんのライブで使用された伍番街の一部)

 

 もともとCIELさんのライブの時は、港湾倉庫のところにソリッドな感じのライブ会場があったんです。でも本作ではそこを取っ払う形で、向こう側にコンテナやガントリークレーンといったものがある場所に変えたので、改めて考え直して港にしました。
 ここは結構広いエリアなんですが、コンテナなど繰り返しで使ってるものも多いので、処理的にも軽くすることができたのかなと思います。個人的に、かなり思い入れはありますね。
 あと全体的なことで言うと、やっぱり今回神椿市に入り込めるということで、観測者さんに喜んでもらうのが一番ですよね。
 なので先ほどもありましたが、MVやライブで出てきたシーンをなるべく再現したいと思っていました。パンドラや教会の前、V.W.Pの『魔女』で出てくる塔の屋上、でかると戦の『糸』の不可解空間といったところは、なるべくMVや元々のリファレンスと比較して再現しました。そこはこだわった部分ですね。

(『糸』のMVがベースになった、でかると戦の不可解空間)

 

他には、音楽室や灯台内部なんかもエモでお気に入りです。

 

Benjamin氏:
 自分が一番やりやすかった背景は自然が多い背景で、難しかった背景は工場やたくさんのビルがあったところです。SFっぽい背景とかですね。それから水没地区はビルと自然が混ざっていたから、やっていて本当に楽しかったですね。

(水没地区のコンセプトアート)

 

――この背景は作るものが多いうえに広くて、作るのが一番大変だったかと思います。その他には、特にここをみんなに見てほしいという部分はありますか?

 

Benjamin氏:
 弐番街の表通りですね。ストリートのデザインが難しかったので。

(弐番街表通り)

 

アオイ氏:
 これ、結構無理お願いしましたね。要はストリートがメインだと思うんですが、ゲームでも派流のバイクで通ったりする道があるので、道の向こう側にインターチェンジとかをしっかり作りたいなというのがあったんです。そういう細かい、ちょっと遠めの場所も他のシーンに比べてあったかなと。

Benjamin氏:
 でも、アオイさんのCGのグレーモデルガイドは本当に助かりました。

アオイ氏:
 そこは良いワークフローでしたね。逆にこの業界の人は、どういうやり方をやっているかわからないんですが。基本的には、レベルデザイン的なレイアウトを渡してから描くんですか?(自由歩行ではないので、レベルデザインというか普通にグレーモデルかも)

渡邉氏:
 そうですね。でも基本、ディレクターはそれをあんまりやらない(笑)。

アオイ氏:
 やらないんですね(笑)。

渡邉氏:
 もっと大まかな図くらいですね。本当はレベルデザインする専門の人がいるものなんですが、今回はアオイさんそこまで担当していただいてとても助かりました。

アオイ氏:
 結構ジレンマがあって、ここまで作っちゃうと他の人の創作力、想像力を奪ってしまうかなっていう気もするんですよ。余白を作らないから。でも、形状はある程度それっぽく作らないと、イメージが伝わりにくいかなと思って。
 表通りだと、提灯とかも本当は玉を置いておけばいいだけかもしれないんですが、ある程度の形まで明確に作った方がやりやすいかなとある程度解像度”中の下”って感じでやりました。

 

――街の構造そのものが複雑なので、弐番街は特にそういう大変さがあったと思います。おかげさまで非常に良い背景になっていると思いますので、観測者の皆さんにもご覧いただきたいですね。
 それでは、渡邉さんが特に見どころだと思われる部分をお聞かせください。

 

渡邉氏:
 特定のポイントというよりは、やっぱりこれだけのシーン数があるので、全シーンを見るだけでも楽しめると思います。あといかにもPRっぽい感じになってしまいますが、Quest単機でできるということは、気軽に楽しめるということだと思うんですね。一緒にPCを立ち上げて、ということをしなくても良いので。
 神椿さんのコンテンツを知らない人も、Quest単機で気軽にプレイできるというのがやっぱりいいところだと思います。
 なので、この世界観をいろんなシーン、シチュエーションで楽しんでもらいたいなという感じですね。

(本作では膨大なシーンを、様々なシチュエーションで楽しむことができる)

 

 それと、プレイヤーポジションが固定されているので、本作はVR酔いしにくいんです。僕はVR酔いがひどく、個人的には移動できないゲームほうがありがたいんですよね。
 やっぱりVRが苦手な人って、「酔うからできない」って人が割と多いんですよ。プレイヤーポジションが固定されているぶん、そういう人も酔いにくいゲームだと思います。その辺りも含めて、VRを敬遠してる人にもぜひやっていただきたいなと。

 

アオイ氏:
 ちょっと僕からもいいですか。渡邉さんがおっしゃっていた固定のいいところは、他にもあるんです。まず前にもお話した、絵作り的なところで見せたいものが見せられるというのがひとつ。
 あと、没入感は下手したらこっちのほうがあるかなと思っています。要はスティックを倒して歩いていくとやっぱ(実際には歩いていないのにゲーム上では動くことに)違和感があるし、それに対して化歩ちゃんたちが自動で歩いてついてきたとしても、やっぱりどうしてもゲームっぽい動きになっちゃうかなって。
 逆に固定視点でも、部屋の大きさ次第ですが1,2歩ぐらいだったら歩けるじゃないですか。それで若干、背景やキャラクターを横から見てみたりとか。そのぐらいがすごいリアリティがあるんです。
 自分も体験版とかでプレイしたときに、V.W.Pの皆さんが本当にいるかのような感覚になったので、固定というのはすごい良いところもいっぱいあるなと思いました。

 

 

◤◢◤ ここだけの話 ◢◤◢

 

――ここだけの話、苦労話や打ち明け話などありましたら、お話いただけますと幸いです。

 

Benjamin氏:
 自分は最初はちょっとペースが遅かったから、もっと速いペースになれるようにがんばりました。

アオイ氏:
 ベンさんはめっちゃ速いですよ。最初は慣れなかったところもあるから、って感じですかね?

Benjamin氏:
 そうですね。VRゲームで初めてコンセプトアートを作るので、色々勉強しました。特にこのゲームは沢山のシーンやデザインスタイルがあるから、本当に色々なデザインを勉強しましたね。

渡邉氏:
 自分はスケジュールやその他の部分を結構フレキシブルに調整していったのが、一番大変なところでした。最終的にはちょっとやっぱりはみ出しそうになったので、自分で1シーン作りましたね。

 

 

◤◢◤ まとめ:皆さんへのメッセージ ◢◤◢

 

――最後に、皆さんの本作にかける想いや、本作を待ってくださっている皆さんへの想いをお伺いできれば幸いです。

 

アオイ氏:
 自分も神椿さん、V.W.Pさんの作品をもともと観測していた身でもあるので、観測者さんの視点でいろいろ詰めることもできました。「観測者だったらこういうの見たいよな」とか、そういった気持ちで臨んでいたので、観測者さんにプレイしていただいた時に「あの場所だ!」とか「こう見えるんだ」とか、そういったところを楽しんでいただければなと思っております。

Benjamin氏:
 色々な背景や新しいデザインを作ったり、アオイさんやAyanoさん、渡邉さんたちがいろいろ教えてくれたりして、勉強になりました。
 この作品に関わった時間は本当に良い経験になりました、ありがとうございます。

渡邉氏:
 まず、このゲームの座組にあたってアオイさんをディレクターに置いたのは、大正解だったなと思います。

アオイ氏:
 ありがとうございます、よかったです。

渡邉氏:
 本当に素晴らしいディレクションだったと思います。そしてアオイさんをはじめとして、ベンジャミン、Ayanoさん、pHさん、モデリングで手伝っていただいたHoneybeeさん、Glitz Visualsさん、exsaさん、皆さんとても素晴らしいクリエイターが協力して、これだけの数を作りきることができました。
 そういうクリエイターたちが一生懸命頑張っていいものを作ろうとしてこの作品が出来上がっているので、興味があれば「このゲームはどういう人が作ってるのかな」というところにも気を向けてもらえたら嬉しいなと思います。

(本作に登場する背景は、Eallin Japan様をはじめとした素晴らしいクリエイターの方々の協力なしでは完成しなかった)

 

 Quest初心者もプレイしやすいゲームだと思うので、今まで神椿さんのコンテンツに触れていなかった人でも楽しめると思いますので、ぜひ手に取ってほしいなと思います。

 

――以上、本日は背景チームの皆さんから貴重なお話を伺いました。ありがとうございました。

(インタビュアー:月島総記 / 記者:風雅宿)

 


Eallin Japan
https://eallin.jp/

https://x.com/eallinjp

背景監督:藍上アオイ

https://aiue-aoi.studio.site/

https://x.com/aiue_aoi_

プロデューサー:渡邉竜実(Eallin Japan)

https://x.com/T98603

コンセプトアート・CG背景制作:Benjamin Round(Eallin Japan)
https://x.com/BenAlbertRound

【インタビュー記事】レジスタ様

2026.04.16

【前書き】

 『神椿市建設中。』シリーズ最大規模の物語となるVRアドベンチャーゲーム、『神椿市建設中。VIRTUAL REALITY』を手がけたクリエイターの方々から、本作を巡る様々な想いについて伺っていく本インタビュー。

 第三回は、本作のスクリプトを担当された有限会社レジスタ様から、演出・スクリプトのチーフアドバイザーである佐藤康幸氏、そしてスクリプターの佐藤大助氏のお二人のお話を伺った。

 

◤◢◤ 自己紹介 ◢◤◢

 

――本日はよろしくお願いします。それではまず、お二方のご経歴や自己紹介からお願いいたします。

 

佐藤康幸氏(以下、康幸氏):
 じゃあまず、自分の方から。有限会社レジスタの佐藤康幸と申します。
 主にコンシューマーゲームを中心にディレクターなど担当しているんですけど、本作ではサブディレクターのようなサポートのところと、スクリプターを担当させていただきました。
 経歴については、結構長いことコンシューマーのほうで、アドベンチャーゲームを中心に携わらせていただいてるという形です。
 ざっと自分からはこういう感じで、佐藤大のほうにパスします。

佐藤大助氏(以下、大助氏):
 はい、自分はレジスタの佐藤大助と申します。
 今回はずっとスクリプターとして、スクリプトを打つところをやっておりました。だいたい序章から此処の章までは、自分の手が入っている感じです。
 経歴の方なんですが、会社がKIDの時にスクリプターで入って、そこから大体15年か20年ぐらい、ずっとスクリプトを打ってきました。

 

――KIDさんといいますと、数々の名作アドベンチャーゲームを世に出された、その道では有名な会社さんですね。

 

大助氏:
 そうですね。いわゆるデジタルノベルをずっと作ってきたところです。

康幸氏:
 自分も旧KIDから今のレジスタに移ってきました。タイトルで言うと『Memories Off』の4あたりから参加させていただいて、それ以外の旧KID時代のタイトルもいくつか。あとは、『infinity』シリーズの『Remember11』から参加している、というような経歴ですね。

 

――大助さんがKID時代に関わられたタイトルには、どんなものがあるんでしょうか?

 

大助氏:
 『Ever17』が一番有名なんですが、それ以外のところでは……KIDの時でも多分20本くらい作っているんですが、もしかしたら『極上生徒会』が一番有名かもしれません。

 

――レジスタさんに移られてからお二方が関わられたタイトルについても、お伺いしてもよろしいでしょうか。

康幸氏:
 自分がレジスタに入ったのは大よりも後で、入った頃に関わったものというと、『Myself ; Yourself』だったと思います。

(『Myself ; Yourself』 レジスタ様公式サイトより)

 

康幸氏:
 それより後のタイトルになってくると、案件系のタイトルとかをちょこちょことやりつつ、『ルートダブル』の方をやらせていただいて、という流れになっていたかなと思いますね。

(『ルートダブル -Before Crime * After Days-』 レジスタ様公式サイトより)

 

大助氏:
 自分はレジスタに入ってからは、オリジナルタイトルのスクリプトには大体関わってきてます。『I/O』、『ルートダブル』、それから『リベリオンズ』も自分が担当して作りましたね。あとはうちの名前では出していないんですが、『祝姫』とかもですね。

(『I/O』レジスタ様公式サイトより)

(『リベリオンズ Secret Game 2nd Stage』)

 

康幸氏:
 あとは『CROSS†CHANNEL』や『Phantom』などの、古いタイトルになってくるかなと思います。他にも何本かオリジナルを作ってたりはしますが、PCで発売されているADVのコンシューマー移植が非常に多かったので、そこら辺をずっと生業としてきたという感じですね。

 

 

◤◢◤ スクリプトとは ◢◤◢

 

――インタビューのメインに入っていく前に、スクリプトという作業についてご説明いただいてもよろしいでしょうか。

 

大助氏:
 まず色々な方が画像や効果音、BGM、背景、キャラクター、エフェクトを作って、プログラマーさんがそれを画面上に出せる状態にしてくださるんですね。
 そしてスプリクターがそれを組み合わせて、プレイヤーさんの目の前の画面にちゃんと表示されるようにする。
 つまり用意された素材を、どういう順番でどんな風に表示していくかを設定する。それがスプリクターの仕事、スクリプト作業の一番わかりやすい表現かなと思っています。
 あとはキャラクターにどういう表情をさせるのか、どういうポーズを取らせるのかといった部分の演出もですね。

 

――これは映画でいうところの、編集に近い作業ですよね。ノベルゲームの見え方、つまりお話がどのようにプレイヤーさんに伝わるかというのは、スクリプトでほとんどが決まると私は思っております。

 

 

◤◢◤ 本作の開発に関わられた経緯 ◢◤◢

 

――先ほどご経歴の部分で、ノベルゲームの歴代ランキングにランクインしてくるような名作の数々が、お二人の関わられたタイトルとして挙げられてきました。そんなお二方が、本作にご参加いただいた経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか。

 

康幸氏:
 月島さんからご相談を受けたのがきっかけで参加させていただいた、という形になります。
 ご相談を受けることになったそもそもの経緯というお話になると、以前ご一緒に開発させていただいた『ルートダブル』というタイトルのご縁から、今回のタイトルへ繋がったのかなと私は思っております。

大助氏:
 自分も、作成したゲームを評価していただいて、それが今回に繋がったのかなと思っております。

 

――おっしゃる通りです。レジスタさん、旧KIDさんというのは、ノベルゲーム界では匠というか、一種伝説的な力のある方々です。私が以前にメインシナリオを担当させていただいた『ルートダブル』と『リベリオンズ』という作品で、お二方にはそれぞれ演出やサブディレクションといったお仕事をご担当いただきました。
 そしてそれが非常に素晴らしいクオリティだったので、今回ぜひお力をお借りしたいと思い、お声掛けさせていただいたという流れになります。

 

康幸氏:
 こちらこそ、そこでお話をいただいて本当に光栄でした。感謝しております。

 

 

◤◢◤ 本作で担当された範囲について ◢◤◢

 

――ノベルゲーム界のレジェンドともいえるお二方を本作に招聘させていただいたわけですが、本作におけるお二方のご担当作業についてお聞かせください。

 

康幸氏:
 じゃあ、自分の方から。開発初期に入ってやらせていただいた部分で言うと、ゲーム全体のシステム面の設計ですね。システム面やデザインについて、設計するところからお手伝いを開始させていただきました。
 自分自身VRゲーム自体を設計するのが初めてだったので、そこはちょっと手探りなところがあったんですが、今までやってきた「どういうデザインにすると、よりプレイヤーさんがプレイしやすくなるのか」というところを考えながら、プロトタイプになる部分を作らせていただきました。
 その後開発が進んできた時には、「どう映したらいいか、どういう見せ方をしたらいいか」という演出面のサポート、それから開発後期には実際のスクリプトも担当させていただいています。

大助氏:
 自分の方は、もう最初から最後までスクリプトをずっとやらせていただきました。序章から此処の章までのスクリプトについて、大きく方向性が分かるものをまず作らせていただいて、そこから時間がある限り演出面を強化するという形ですね。

 

――お二方には今回、このほとんど前例のないVRノベルゲームというものを、いわばゼロの状態から設計して、演出をつけていくという作業をやっていただきました。その辺りの印象について、お話しいただければと思います。

 

康幸氏:
 タイトル規模的な最初のイメージは、他のVR系のアドベンチャーゲームくらいなのかなという感じでした。でも実際に参加させていただいて、話を聞いて、シナリオなどの内容を見ていくと、これはもうすごい膨大なボリュームがあるタイトルだなと。
 限られた範囲で少し短めのシナリオをプレイする感じではなく、本当にどっぷりとその世界に入り込んで、濃厚なストーリーを楽しむタイトルなんだとわかって、「VRゲームの開発というのは新しいステージに入ったんだな」と思いました。
 こうなるともうVRゲームとしては考えられないレベルのボリュームではあったので、この辺りの開発時の大変さは色々あったのかなと。

(世界観にどっぷりと入り込んでストーリーを楽しむゲームとして、本作は開発された)

 

――何もない状態から、試行錯誤して本作をVRノベルゲームという形にしていく作業は、並々ならない大変さがあったと思います。

 

康幸氏:
 佐藤大の方も含めて一番難しかったのは、やっぱりスクリプト自体をどう打っていくかというところですね。
 そこら辺のシステム設計について、初期の段階からGugenkaさんと一緒に考えながら積み重ねていって、最終的にちゃんと作れるものになっていったという印象がありますね。

大助氏:
 これは一体どうやって作っていくんだろう、というところからの始まりでしたね。一番最初にシナリオをいただいた時から「この膨大なシナリオを、3D上で時間内に表示するためにはどうすればいいんだろう」というところは、だいぶ色々話をして詰めていきました。
 当然プログラマーさんも神様ではないので、できることできないことを考えながらやっていくのは本当に大変でした。

 

――本作の場合、ボリュームは通常の2Dノベルゲームくらいあり、なおかつバリバリ動きます。いわば40時間の映画を作るような作業をお願いしていたと思いますが、その辺りの物量的なお話について伺ってもよろしいでしょうか。

 

康幸氏:
 まず通常の2Dアドベンチャーゲームと同じような物量があって、今回3Dというところで、一段階次元が上がったぶん作業が増える。そこからさらにVRゲームというところで、もう一段階考えなきゃいけない。
 つまり考えなければいけない事が一気に二段階増えて、ひとつのシーンを作るのでも、2Dのアドベンチャーゲームを作る時の2倍、3倍と考えなきゃいけないことが増えている。その辺り、作業にかかる時間は膨大になっていったなと。

 

――2Dのノベルゲームを作るのに比べて、どのくらい大変でしたか?

 

康幸氏:
 倍どころではなく、3~4倍くらいの大変さがあったな、という感じはしますね。
 実際に対面して喋るシーンを作るにしても、2Dのアドベンチャーゲームの場合だと、「どの場所でどのキャラクターと話しているか」、つまり背景を1枚、キャラクターの立ち絵を1枚表示すれば終わるんです。
 ここが3Dゲームになると、背景のどのポジションにどのモーションでキャラを立たせてとなって、あとはキャラクターとの距離感による位置の調整もある。さらにVRになった時の見え方も考える。その都度、作業の大変さが増えていきました。

(どちらも同じ場所でのシーンだが、視点の向きやキャラクターの立ち位置、距離感などがそれぞれ違っている。このような調整が3Dゲームでは必要になってくる)

 

 

◤◢◤ 制作初期の頃を振り返って ◢◤◢

 

――今回、お二人にはノベルゲームとしてまさに骨格の部分、芯の部分を作っていただいたと思います。制作初期の頃はまさに暗中模索の状態でしたが、あの頃を振り返ってのお話をお聞かせください。

 

康幸氏:
 まずはスクリプト自体のシステムをどういった形で打つか、というところからスタートしたなと。この手の3Dのゲームだと、一般的には『ダイアログシステム』というシステムを使うことが多いんです。一般の方にはちょっとイメージしづらいと思うんですけど、フローチャートのような形式でスクリプトを打つんですね。

(ダイアログシステムの参考画像。画像はUnity Asset store『Meet and Talk – ダイアログシステム | プロ版』から)

 

 逆に2Dのアドベンチャーゲームを作るときには、『テキストベース』という形で作るものが多いんです。文章がずらーっと並んでいて、それを文字の羅列でスクリプト制御して画面を作るという形式ですね。

(テキストベース参考画像。本作で実際に使われたスクリプトのもの)

 

 ここら辺はGugenkaさんと方向性の話になった時に、色々話し合ったのを覚えてます。最初はダイアログシステムを検討していたのですが、最終的には「自由度を増やそう」というところが決め手になって、テキストシステムを使う形に方針転換することになりました。
 型にはめて作ればいいダイアログシステムと違って、何でもできるぶん注意しなきゃいけない点が増える大変さというのが、テキストベースにはあります。でも、だからこそ場面場面に合わせた、よりバリエーションのある演出をつけることが可能になったなと思っています。

 

――テキストベースへの転換を最初に提案されたのは、大助さんだったと記憶しております。その転換によって制作の自由度が上がったぶん、やることも当然たくさん増えたと思いますが、その辺りはいかがでしたか?

 

大助氏:
 そうですね。増えたのは増えたんですが、ダイアログシステムのままではやっぱりワンシーン作るのに時間がかかりすぎてしまうなというのがあって。
 メッセージを20個ぶん作るだけで数時間かかるんじゃないのかなってなった時に、もうこれは無理だなと判断しました。

 

――最終的に本作に実装された演出の数々は、とても素晴らしいものになったと思います。それらの実装は、ダイアログシステムのままでは無理だった、ということになるんでしょうか?

 

大助氏:
 そうですね、無理だったと思います。そもそも月島さんがおっしゃられた通り、今作は誰もやったことのないプロジェクトなんですよね。
 規模とやろうとしていることを全て考えると、やっぱり新しいシステムがないといけない。既存のものでやろうとするのは無理だったんだろうなと、今考えるとすごく思いますね。
 ダイアログシステムで作るのを想定しているのは、多分ゲームの合間合間のちょっとしたやりとりなんです。例えばシューティングゲームをクリアした後、インターミッションでちょっとやりとりがあって次のステージに行く、というものを作るのを想定していると思うんですよ。今考えると、それでアドベンチャーゲームは作れないよなと。

(本作を盛り上げる演出の数々は、システムの変更という英断なしでは実現不可能だった)

 

――ここでインタビューをご覧になっている皆さんにお伝えしたいのは、最初にここまで難航していても、レジスタさんは普段作られている2Dノベルの名作のようなレベルの演出を入れようと、今作に臨んでいたということです。
 ノベルゲームである以上は、UIやUX、演出も普段と同じレベルのものがなければならない。そういう意味で、一切妥協なく今作に臨まれていたのでしょうか。

 

康幸氏:
 ベースとなるシナリオを参考にその辺りを選ぶ、というのがまず大前提としてあります。
 そのシナリオのシーンへいかに演出をつけていくかとなった時に、ダイアログシステムで固定的な形で演出をつけていった方が、ボリュームが多いぶん効率よく場面を作っていくことができたんだろうなとは思うんです。
 でもやっぱり今回はVRなので、見せたい側がカメラアングルを自由にできるというわけじゃない。そうなると、キャラクターの配置とその場面の見せ方というところが、さらに重要になってくる。そこをフレキシブルに対応していくとなった時に、弊社が慣れているのがテキストベースだったので、そういう形でできないかという話になりました。
 それにシナリオを読んでいっても、本当に自然な流れでシナリオが展開されていて、様々な場面のシーンが用意されている。なので、それぞれの場面に合った演出をつけていかないと、クオリティが担保できないんじゃないかと思ったんです。
 なので大変でも自由度の高いもので作っていった方が、最終的にいいものになるんじゃないか。そういうイメージがあったんです。

大助氏:
 これはちょっと話の本筋から外れるかもしれないんですが、自分の一番理想とするスクリプトは、ゲームをしていて何の違和感も抱かないものなんですね。よくわからないところで時間がかかるといったストレスが、ゲームをやっていて一切かからない。それから、見せたいところはユーザーに驚いてもらえる。
 あと、これはちょっと伝わるかわからないんですが、ライターさんの頭の中にあるものを、そのままユーザーの目の前に出すってことですね。この三つを、いつも気をつけて作っていたんです。
 だからシナリオを読んで、「多分、ライターさんはこういうことを考えてるんだろう。じゃあ、こういうふうに表現しなきゃいけないな」というのを考えながら、常に作っていました。
 そうなった時に、ダイアログシステムで作り出せるものは、これは意図したものでは絶対ないだろうとなりまして。このままでは色々ダメなので、もっといいものを作れる環境をくださいと、何とかGugenkaさんにお願いすることになりました。

 

――ライターの頭の中にあるものがゲームの画面に出ているということにかけては、メインシナリオライターとして、私が確実に保証します。大助さんをはじめ演出面で関わってくださった方々は、こんなに実現していただいていいのだろうかというくらい、本当に難しい演出を見事にやってくださりました。

(歌唱シーンをはじめ、本作には様々なリッチな演出がふんだんに組み込まれている)

 

――この流れでお伺いしますが、バックログをはじめとしたノベルゲームならば当然期待してしまう機能群について、ゼロの状態から設計して実装していくのも大変だったと思います。その辺りについてはいかがでしょうか。

 

康幸氏:
 一番最初に、「通常のアドベンチャーゲームだと、こういう機能があるよね」というところをひとまず出させていただいて、そこから「VRゲームに落とし込んだ時にできることは何だろう」とお話させていただきながら、構成を組んでいった記憶があります。
 GugenkaさんもVRゲームは作られてきましたが、それでもVRアドベンチャーゲームとなると手探りな部分もあったので、そのあたりは一緒になりながら作っていけたかなと思っております。

 

――これはインタビューをご覧になっている方々へ向けてになるのですが、お二人の古巣であるKIDという会社さんは、そのUIに定評がありました。KID製のUIは俗に「KIDシステム」と呼ばれ、ノベルゲームの一つのスタンダード、UIの理想形として語られることも多いほどに完成度が高いものでした。
 今回レジスタさんというか、康幸さんにお声掛けさせていただいたことの一つの狙いとしましては、本作にもそのKIDシステム由来の知見をお借りしたかったというのがあります。

 

康幸氏:
 いかにプレイヤーが操作しやすいかというのをベースに考えるのは、弊社の中での基本的な考え方でもあるんです。そういったところを一番に考えていくという部分を、本作に少しでも載せられたならよかったなと思っています。

 

 

◤◢◤ 力を入れた所や見どころについて ◢◤◢

 

――お二方が本作で特に力を入れたところや、見どころといった部分についてお伺いできればと思います。

 

康幸氏:
 スクリプト面の演出で言うと、いかにストレスなくプレイしていただけるか、というのを一番気にしながら演出を組んでいました。
 なので実際にプレイされた方が気に留めない、要するにプレイしていて何も違和感なく詰まるところがない、プレイしたくなくならないようにできればいいなと。それで細かいところにはなるんですが、フェードをかける時間の長さや、入るタイミングといったところには特に注力しました。
 あとは、キャラクターたちの動きですよね。動きを切り替える時なんですが、3Dアニメーションなぶん、自然な形で次のモーションに移行するのが難しいところがあるんです。そういうところで違和感が出ないようにする、というのを注意しながら作っていきましたね。

(『派流の章』でチノが挨拶をするシーンも、動きの切り替えが違和感なく実装されている)

 

大助氏:
 自分はちょっとひねくれた話になってしまうんですが、話に加わっていないキャラクターが「何かを考えて動いている」ように見えるようにした、というところですね。
 ちょっと外れたところにいる人たちが、どこかを見ている。そういう時に、「このキャラクターは何を考えてるんだろう」というところに注目していただくと、ちょっと楽しいかもしれません。

 

――確かに、そこは面白い視点ですね。特に登場人物の多い派流の章では、今話してるキャラ以外のキャラクターたちもそれぞれ絶妙に動いていて、それがなんとも言えず「生きてる」という印象でした。

 

大助氏:
 これはシステム的な話になってしまうんですが、やっぱり話し始めたキャラクターの方を全員が向いたりするというのは、最適化された動きになってしまって逆に違和感があるというか、すごく嫌だったんですね。
 なのでわざとちょっとタイミングを外して、「まだこの人は派流ちゃんのことを気にしてるんだな」みたいなことを考えてるんだな、というのが伝わるように作ったつもりです。

 

 

◤◢◤ ここだけの話 ◢◤◢

 

――ここだけの話や苦労話、打ち明け話などがありましたら、お話しいただければと思います。

 

康幸氏:
 これはスクリプトの話になるんですが、座標システムを作っていく時が一番苦労しました。キャラクターをどの背景のどの位置に立たせるかを指定していく際に、数値を入れるとその位置にキャラクターが立つというものですね。
 この数値の求め方を、開発途中の結構進んだ段階で変更したんです。これはGugenkaさんの阿部さんと色々やり取りさせていただいて、ハード的なものやUnity上で作られているシステム面での制限などが色々あった結果、途中でガラッと変えたんですね。
 そうなった時に座標の求め方というのがもう全部変わって、数値を全部打ち直すという作業が発生しました。大変ではあったんですが、逆に言うとそれをやらないと、後半の開発ではさらにもっと大変になるというのが分かっていたんです。
 だから、その段階で何とか変えられないかとお願いをさせていただいて、システムの土台から一度ひっくり返して変更して、そこまで作っていた分は作り直していった。あれが一番大変だったな、というイメージです。

大助氏:
 自分の場合は、やっぱりアイテムの多さですね。ノベルゲームを1本作るときって、素材アイテムの数はだいたい2000から3000ぐらいなんですよ。キャラクターの表情や背景や、SE、BGM全部ひっくるめてボイス数以外のものをカウントすると、2000から多くて3000はいかないぐらいなんですが、今回は万いってるんじゃないかなと(苦笑)。
 それだけの素材があるので、もう何が何やらで。例えば序章を作ってる時は序章の素材が全部頭に入ってるんですけど、狸眼の章に入ってだいたい途中まで作ると、序章の素材はどれがなんだっけとなる。こういう風に延々やっていたのが、一番大変だったなと思います。
 今の話で言うと、普通のノベルゲームの5倍から6倍ぐらいあるので。

 

――ひとつのアイテムでも、使い方がいろいろ違ったりしますからね。角度によって、物でも背景でも見え方が違うように作ってありますし。

(例えばこれらのシーンの背景はまったく別の場所のように見えるが、時間帯と視点の向きによって見え方が違うだけで、実際には同じひとつのマップを使用している)

 

大助氏:
 同じ表情でも、向きだけで印象が全部ガラッと変わりますからね。
 そういったところをずっと考えながら、どれが一番いいんだろうとやりつつ、途中で表情を変えた方がいいかなとなったり。単純に一番は物量ですね。一番の敵というか(笑)。
 そうだ、あともうひとつ。ゲームを作っている時にちょっと感動というか、すごいなと思ったのが、VRゲームなので「目が合う」ってところなんですね。
 いつもだったら、やっぱり新しいゲームを買ってそのゲームをやってる時に画面の向こうと目が合うというのは当たり前なんですが、今回は目が合うはずのない人たちと目が合う、「自分が認識されている」という感覚はかなり衝撃でしたね。
 得も言われぬ不思議な感覚になって、本当にびっくりしました。

(目が合い、認識される。そんなVRゲームならではの体験が本作では味わえる)

 

 

◤◢◤ まとめ:皆さんへのメッセージ ◢◤◢

 

――では最後に、お二方が本作にかける想いや、このインタビューをご覧になる皆さんへのメッセージをお願いできればと思います。

 

康幸氏:
 演者さんでもあるV.W.Pの皆さんやそれ以外のキャストの皆さんも含めてそうなんですが、『神椿市建設中。』という世界観はすごく広大だと自分は思っています。
 そういった大きな世界観をいかに表現できるかというところを踏まえながら、本作の開発に携わらせていただいたので、ぜひともその世界を実際に体験していただきたいなと思います。
 また通常のディスプレイの2Dで見るゲームとVRゲームというのは、やっぱり体験の度合いが違っているんですが、これは実際に体験していただかないとわからない部分ではあるので、実際にご自身で体験していただきたいなと思いますね。

大助氏:
 自分が一番思ったのは、このゲームを作っていて、キャラクターと言っていいのかわからないんですが、『ここにいる人たち』が生きている、一人一人が生きてるという感覚が結構あるということですね。
 いつもはライブでしか会わないので歌ってる姿しか見えないんですが、このゲームでは食事をしたり、「また明日会おう」なんていう風に言ってくれる。そういう日常を生きている感覚が楽しいというか、何気ない姿や仕草を見られるのがいいんですよね。
 本当に、仮想と現実とが良い意味で曖昧になるような感覚です。

(本作ではキャラクターたちの日常的な、何気ない姿を見ることができる)

 

――本日はノベルゲーム界のレジェンドお二人、偉大な先達の方々に貴重なお話を伺いました。お二方のおかげで完成した本作、完成版も楽しみにしていただければと思います。では、本日はありがとうございました。

 

(インタビュアー:月島総記 / 記者:風雅宿)

【インタビュー記事】Gugenka様

2026.04.09

【前置き】

 『神椿市建設中。』シリーズ最大規模の物語となるVRアドベンチャーゲーム、『神椿市建設中。VIRTUAL REALITY』を手がけたクリエイターの方々から、本作を巡る様々な想いについて伺っていく本インタビュー。
 第二回は、本作の開発を行う株式会社Gugenka様から、VRディレクターを務めた姫路拓也氏、リードエンジニアを務めた阿部英輝氏のお二人のお話を伺った。

 

 

◤◢◤ 自己紹介 ◢◤◢

 

――本日はよろしくお願いします。それでは、お二方の自己紹介からお願いいたします。

姫路拓也氏(以下、姫路氏):
 株式会社GugenkaのXRエンジニアで、開発をさせていただいております。姫路拓也と申します。
 VRのいわゆる黎明期と呼ばれる本当に初期の頃から、主にXR・VRコンテンツ開発を行っておりまして、その中で『Re:ゼロから始める異世界生活』のVRアプリを弊社で開発させていただいた際、メインでやらせていただきました。
 それがかなり評価いただきまして、またそれに続いて結構有名なIPタイトル様のコンテンツを扱った、VRのコンテンツなどを中心に開発を行ってきております。
 本日はよろしくお願いいたします。

阿部英輝氏(以下、阿部氏):
 同じくGugenkaでXRエンジニアとして所属しております、阿部英輝と申します。これまでは、VRのデバイスを使った開発を主に行っておりました。
 ここ数年ですと、KAMITSUBAKI STUDIOさんの展示イベントで体験できるコンテンツの制作ですね。コミックマーケット103ではV.W.PさんのMR体験、2023年の東京ゲームショウでは花譜さんのMRアーカイブのコンテンツなどを制作させていただきました。コミックマーケットの方が『玩具』、東京ゲームショウの方が『邂逅』になってます。

(コミックマーケット103における『玩具』のMR体験の様子。画像はGugenka様公式サイトから)

 

 

◤◢◤ 本作の開発に関わられた経緯 ◢◤◢

 

――では、今作の開発をGugenka様が行うことになった経緯についてお聞かせください。

姫路氏:
 もともと、花譜さんたちが普段活動されている3Dモデルのモデリング制作を、弊社で担当させていただいていたんですね。それでKAMITSUBAKI STUDIOさんとの関わりがあったところに、「VRのノベルゲームの開発をやります」という話を新しくいただきました。
 最初の企画段階では阿部さんからデモの開発というか、アイデアから生まれた内容の検証を行っていくのがスタート地点だったかなと思うんですが、阿部さんその辺り覚えてますか?

阿部氏:
 ちょっと過去の記憶を探ってみたりしたんですが、私の方にお話が来て開発を始めたのが、おそらく2021年の11月ぐらいでした。そして12月くらいに一番最初の……観測室でVRとして見られる、デモのアプリが完成しました。

――前作の『神椿市建設中。EMERGENCE』が2021年10月に開催されておりましたので、その頃にはすでにお話があったということですね。

阿部氏:
 『EMERGENCE』には遊ぶ側として参加していたので、当時は『EMERGENCE』ロスが私の中であったんですよ。そしたら、ちょうどそこにお話が来たので、「わーっ!」という感じでした。

――阿部さんは、当時から観測者(V.W.Pの皆さんのファンネーム)でもあったわけですね。

 

◤◢◤ 本作で担当された範囲について ◢◤◢

 

――本作においてGugenkaさんが担当されている範囲について、お聞かせください。

 

姫路氏:
 まず土台として、VRで動作する部分全般の機能実装ですね。あとは実際のVRの中で動作するノベルゲームとしてのシステムの部分や、インタラクション部分です。キャラクターとの触れ合いや探索、随所にある歌唱パートの演出と開発も、私たちの方でさせていただいておりました。

(本作にはこのような歌唱シーンが随所に存在する)

 

――花譜さんたちの3DモデルはGugenka様がもともと担当されていたとのことですが、本作のキャラクターについてはいかがでしょうか?

姫路氏:
 V.W.Pの皆さんのキャラクターモデルに関しては、弊社モデラーの五十嵐さんが手がけたモデルを使っています。弊社としても、こういった作品で使っていただく機会をいただけて非常に嬉しいです。
 新しく作らせていただいたキャラクターモデルも、ありがたいことにファンの皆さんからかなり評価をいただいている面もあります。
 なので、キャラクターの動きや触れ合いに関わる部分も、ディレクションを含めて私たちの方で開発させていただくことになりました。

阿部氏:
 私の担当は、ベースのVRの操作システム全般ですね。その他には、ノベル周りのシステムがもともと2Dベースだったので、それをVR用に移植する作業などです。そこにキャラクターの表示などのシステムも全て含まれています。
 あとはキャラクターや背景の描画周りのシェーダーと、プログラム言語を少し担当させていただいております。

 

 

◤◢◤ 本作にかける思い ◢◤◢

 

――本作の中心的開発者であるお二人の、本作にかける思いについてお聞かせください。

姫路氏:
VRになるという話を最初いただいた時、個人的にはワクワクというか、期待をすごくしていました。
それこそ私も花譜さんを最初に知った時から、現実とバーチャルを組み合わせたような表現というか、まさに今の神椿市のような現実でありながら仮想世界であるような部分を、すごく魅力的に感じていたんですね。それで私も『糸』が初めてお披露目されていたタイミングから、花譜さんのファンでいたんです。

『糸』MV

 

そこから地続きで、ずっとファンで居続けた流れで今回のお話が来たので、「これVRにしたら絶対面白いだろうな」と、まずそこで思ったんですよね。
最初の方に阿部さんが話していたと思うんですが、デモを作る段階で「観測室の中にいて、そこから神椿市にアクセスする」という簡単なプロップで動きをつけていました。
まだ全然シナリオも読んでいなかった頃だったんですが、V.W.Pさんのミュージックビデオに登場する世界観の中に入っていけるVRになるんだろうな、というのは漠然と思っていました。なので、ここから先どう広げていくか、どんなことをやったら面白くなるだろうかというところを、まず妄想の段階から入っていたんですよ。
それでいざプロットを見させていただくと、これがかなりの物量で。この内容をすべて取り込んでいくことができるのかと思うのと同時に、内容の濃さも感じました。プロット段階で、これ絶対面白くなるなと。
今回Meta Questで開発することになるので、ハードウェアの制限もある中でシナリオをどうやって良く表現していこうかと、かなり最初の段階から色々考えていましたね。

――Meta Questの場合、PCゲームとはまた違った制限があるわけですね。

姫路氏:
PCでやるようなハイクオリティなゲームとは、ちょっとアプローチが違うんです。かつ、これまで作り上げてきたKAMITSUBAKI STUDIOさんとしてのブランディングを、損なわないようにしなければならない。そういったプレッシャーも感じながら、この作品の開発に挑みました。

当時を振り返ると、色々と試行錯誤したなと思い返すこともあるんですが、やっぱり一貫しているのはキャラクターに対しての見せ方です。
どうやったらキャラクターが背景に馴染むのかや、動きの自然さといった部分を考慮しながら、キャラクター単体にフィーチャーした発想で作っていました。
やっぱりこの作品の見どころは、VR作品であるが故に、キャラクターが目の前に本当に存在するかのように登場するところなわけですよね。

(VRゲームである本作では、文字通りプレイヤーの目の前にキャラクターが登場する)

 

なので作品としてはノベルゲームなんですが、キャラクターがより際立って魅力的に見える施策というのは、最初からかなり考えて作っています。
だからファンの皆さんが、「この表現はやっぱりVRならではだな」と感じ取ってくれるようなものは、このゲームの中に詰め込まれていると思っています。
長大な作品ではありますが、キャラクターの所作や表現といった部分は、やっぱり一つ一つ丁寧に作っているので、そこはぜひ魅力として受け取ってもらいたいなと。

阿部氏:
私の方はもともとVRコンテンツ界隈の人間でしたので、VR関係についての思いが結構強いといいますか。神椿市という舞台やV.W.Pの皆さん、バーチャルアーティスト等の要素はやっぱりVRとの親和性が高いな、と日々思っていました。
ただ、コンテンツとVRの紐付け方が難しいところもあるなと感じていたんです。作品が好きな方でも、「VR全然わかんない、知らない。だから触らない」となってしまったりするんですね。
ただ今作においては、現実のプレイヤーがVRデバイスをつけるという動作すらも、本作の体験や物語になってくると感じています。
VRデバイスをつけるのって手間だなと、つけたことのある人は皆さん感じるかなと思います。それが原因でVRから離れてしまった人や、VRが初めての人にとっても、『神椿市建設中。』が手軽に体験できるコンテンツになることで、VRコンテンツ業界にも貢献できる作品になっていたら嬉しいなと思って、日々頑張っていました。

――阿部さんも姫路さんも、年季の入った観測者としてやっていただいていると思います。阿部さんはかなり忙しい開発の間に、わざわざ新潟から東京までライブなどにも足を運んでいるとお伺いしました。

阿部氏:
はい、一般の人として参加させていただいています(笑)。

――お二方だけではなく、Gugenka様の他の開発者さんたちも熱量が非常に高いと感じております。もともと観測者で、という方が多いのでしょうか?

姫路氏:
元々好きだった人も居ますし、今回初めて知って、それでファンになった人も居ます。Discordのアイコンが理芽さんに変わっていたりとか、そんな「めちゃくちゃハマってるじゃん!」という人も居たりしますね。
元々知ってる人はもちろん熱量が高いんですが、開発していく中で作品に魅了されて、作りながらファンになっていって、どんどん熱量高くなっていく。そういう人も居ました。

――V.W.Pさんの仕事に関わりたい、という動機で入社された方もいらっしゃるそうですね。

姫路氏:
阿部さんが出展させていただいていたコンテンツや、試遊会で出した神椿市のVRに触れていただいて、それをきっかけにGugenkaに来てくれたり、そういった経緯で本作に関わることになった人が居ます。
なので、熱量の伝播がすごい作品だなというのも感じますね。

――ちなみに、そのコンテンツは何というタイトルなんでしょうか。

姫路氏:
たぶん『邂逅』や『玩具』のMR体験と、TGS2023に出展させていただいた、はすたーと戦うデモですね。

――2023年の東京ゲームショウ用のアプリですね。本作のある時点の物語を、東京ゲームショウのためだけに開発していただいた幻の作品でした。

(東京ゲームショウ2023年版デモ。狸眼がプレイヤーを神椿市に誘い、そこで一度だけの共闘をするという内容だった)

 

姫路氏:
今かなりレアですよね。もう体験できないので。

 

 

◤◢◤ 力を入れた所や見どころについて ◢◤◢

 

――本作の開発において特に力を入れたところや、見どころについてお聞かせください。

姫路氏:
個人的な部分のお話になると、私はもともとすごくVRをやっていて、ゲームも好きで、だから自分の頭の中に、なんとなく「こうあるべき」みたいなものがあるんですよね。
ただそこに向かっていくときに、どうしても障害になってきてしまう部分があるんです。ある一定のハードスペックの中でやらなければいけないので、表現の取捨選択を迫られる部分が本当に多くて。
本当であれば、頭の中に思い描いている表現を100%そのまま出したい。それこそ神椿さんのライブに劣らないような表現をできるのが、一番ベストだと思ってはいたんです。
それでもやっぱり、どうしてもハードスペックという超えられない壁というか、なんとか克服しなければならないものが、目の前に何度も何度も立ち塞がってくるんです。ただその中でも、観測者の皆さんが期待しているであろうものに、なるべく近づける形をとりたいなと思っていました。
「あなたが神椿市の中にいるんですよ」と、より自然に、疑問なく体験できるようにしたかったんですよ。
いわゆる一般的なゲームって、電源をつけてコントローラーを持って、「よしゲームをやるぞ」とゲームの画面をテレビで見る。つまり、「自分がゲームをやっている」という状況じゃないですか。

――ゲームそのものとそれをプレイする自分とは、あくまでも切り離されているということですね。

姫路氏:
でも今作の場合はそうではなく、「ヘッドセットをつけたら、もうあなたは神椿市の住人です」と、いわゆる現実との境目が一切なくなるような体験というのを、やっぱり届けたかったんです。VRならではの部分というよりも、そうであるべきだと思っていて。
花譜さんとV.W.Pの皆さん、他のアーティストの皆さんへの造詣が深いファンの皆さんがいるわけなので、やっぱりゲームとして体験するというよりは、目の前に本人がいるようなものを提供しないといけないと思っていたんです。
実際にはゲームの化歩と現実世界の花譜さんというのは、つながっていないような形になってはいます。でも、やっぱりご本人と対面しているような体験というのは、VRでしか味わえないものじゃないですか。

(本作ではこのように、ご本人と対面しているかのようなシーンがいくつも存在している)

 

だからハードスペックの問題というのもありつつも、普段見ている花譜さんを目の前に表現したい。目の前に登場するキャラクターに対しての表現というのは、チープであってはならない。普段見ているキャラクターとの差異・ギャップもなるべくあってはならない。
かつ、VRなので背景との馴染みのように越えていかなければならない要素があったので、そういった前提が必要かなと思っていました。

あと「ザ・システムUI」みたいな表現は、なるべく避けようと。
バトルパートは完全にゲームとして割り切ってやっているのでいいんですけど、ノベルパートはテキストウィンドウだけにして、なるべく余計な情報は入れないようにしました。

(本作のノベルパートは、ゲーム的な情報表示が極めて少ないものとなっている。画像は理芽さんの実況動画から)

 

誰が喋っているのか、ここが今どこなのか、そういった色々な情報を複合的に表現できるような仕組みが、本当はあったと思うんです。ゲームとして、一度はそれを導入しようと思ったこともあります。

――最終的に導入しなかった理由について、詳しくお話しいただいてもよろしいでしょうか。

姫路氏:
これを入れた時の代償って実はすごく大きくて、「自分が神椿市を俯瞰して見ている」ような体験になってしまうなと思うんです。
本作のプレイヤーは設定的にも外から来た人間ですけど、やっぱり体験者としては神椿市の住人になってほしい。そういう思いがあるのと、VRのセオリー的にもそういった方に気持ちを向けてほしいなと思ったので、なるべく視界に収まる情報量を排除しました。
現実世界で目の前で話している相手の頭の上に、名前が出たりはしないじゃないですか。だから、あくまでも自分自身は主人公という存在であり、その空間で目の前にいるキャラクターと対話している。現実で目の前の人と喋っているような体験というか、VRの中でもなるべく現実世界に近しくなることを目指して作っていました。その辺りはディレクション方面での考え方として、かなりこだわったところかなと思います。

――表示物の表現の変化については、TGS2023年版を見るとよくわかりますね。あの頃は表示物がたくさんありましたが、最終的には今のシンプルな形になりました。

(上:TGS2023年版の会話シーン 下:現行バージョンの会話シーン。右の画像は花譜さんの実況動画から)

 

――また、表示物を少なくしていくという流れの中で、どの方向から声が聞こえているのかをさりげなく表現する、耳が不自由な方向けのインターフェースが今のバージョンでは組まれていますね。

(化歩の右に表示されているカラーバー状のものが、該当のインターフェース。さりげなく、しかし直感的に声の聞こえる方向を示してくれる。画像は幸祜さんの実況動画から)

 

――これは阿部さんのアイデアでしたが、阿部さんがその他に力を入れた部分や、見どころなどについて伺えればと思います。

阿部氏:
まず作品としてですが、本作はVRのアプリではあまり見かけない、ノベルゲームのシステムを積んでいます。例えば単純なセーブとロードはVRアプリでもあると思うんですが、セーブスロットを使ったりバックログで戻ったりというのは、VR作品ではあまり見かけないなと。
そういうところもありつつ、VR作品としての魅力も詰まっていて、ノベルゲーム、VRゲーム、どちらとしてもすごくよくできているなと、そういう風に自分としても思っています。
会社としてはスクリプティングやインタラクション、歌唱シーンの制作で、ライブや過去のMVをずっと研究して制作しているスタッフの方がたくさんいました。
ぜひその辺りもチェックしてもらえると、我々としても嬉しいです。

――ノベルゲームとしての機能とVRゲームとしての表現や機能の実装について考えると、今作のためにゲームエンジンを作っていただいているのに近い状態だと思います。

阿部氏:
そうですね、VR空間を保存して復元するような形になるので。普通のゲームの場合、画面内での形を保存して出すみたいなイメージなんです。
これももちろん簡単ではないんですが、VRだとどうしても物や向きが聞こえ方、見え方、すべてに関わってきます。なので、そこがちゃんと合うように、VRの中にノベルのシステムが組み込まれるように作っていくというのは、少し大変ではありました。

 

◤◢◤ ここだけの話 ◢◤◢

 

――ここだけの話、苦労話や打ち明け話などはありますでしょうか?

姫路氏:
今回、ゲームとしてはVRノベルゲームという形をとっていますが、実は私たちとしてはノベルゲームを作ったことがないんです。
今回は月島さんはじめ、レジスタさんのスタッフの皆様と協力させていただきながら作らせていただいたんですが、当初はどうしても探り探りでやっていたんですよね。なにせ本当にノベルゲームを開発した経験がない状態からなので、ノウハウもなく、何をもって正とするべきかわからないというか……。
私もゲームとしてノベルゲームを楽しむことはもちろんあるんですけども、やっぱりプレイする側と作る側とでは、考え方は全然違うものなんだと思いました。

――特にそう感じられた部分について、お聞かせいただけますか。

姫路氏:
ゲームとしてプレイしていく中だと汲み取れないような表現というか、細かい演出ですね。このタイミングで音を鳴らすとより臨場感が増すとか、このシーンでキャラクターをこういう風に動かすと、よりグッとくるとか。
そういう細かい所作や、本来プレイヤーは気づかないような効果音の配置など、本当に細かいところの積み上げでノベルゲームは出来上がっていくんだなというのは、今回の開発を通して私自身も学びました。
今回初めてノベルゲームのスクリプティングを担当した弊社のスプリクターのメンバーも、すごく学びがあったと全員口を揃えて言っています。なので、本当に奥が深いんだなと。
ただテキストを読ませるだけじゃなく、細かい部分一つ一つにかなりこだわりを持ってスクリプトって書かれてるんだな、というところは作りながら気づくことができましたし、やっぱり気づかないと難しかったですね。

当初はレジスタさんと半分半分でスクリプトを作らせていただいたんですが、もともとずっとノベルゲームを開発されていらっしゃったレジスタさんの作ったシナリオと、弊社の方で今回初めて担当してお出しした内容だと、やっぱりどうしてもクオリティに差がありました。
監督である月島さんからもご指摘がいくつかありましたし、やっぱり単にテキストを読み進めていくだけではなくて、一つ一つ職人としてのこだわりが詰まってるんだなというのは、作りながら思いました。
ということで苦労話の大きなものとしては、ノベルゲームを初めて作らせていただきましたが、思った以上に大変でした……と(笑)。

阿部氏:
本当に全くその通りで、私も同じ気持ちでした(笑)。ノベルの制作の作法の知見がほとんどなかったので、その辺りはレジスタさんの皆さんに本当に感謝しています。

(本作のノベルパートは、Gugenka様やレジスタ様のこだわりと苦労が詰まったスクリプトによって演出されている)

 

姫路氏:
あと、シナリオにはもともと、月島さんが演出指定を入れられてましたよね。それをそのままスクリプトとして書き込んでいっても、ちゃんとしたノベルゲームになっていたのが、それはそれですごいなと思っていました(笑)。
この通り書いていったら、クオリティの差があるとはいえ、ちゃんと演出がついていて読めるものになっている。それがあったからできた、という部分もあると思うんです。テキストだけ並べて、演出の部分があまり考慮されていないようなシナリオの書き方だったら、今でも多分すごい苦しんでいたんじゃないかな。
なので月島さんに書いていただいたシナリオの構成と、レジスタさんからある種受け継がせていただいたスクリプティングのノウハウがうまいことハマって、Gugenka社内でもスクリプターのメンバーが作品を作ることができたという感じですね。
「今思えばあの時大変だったね」みたいな気持ちではあるんですが、苦労話といえば、そういうところがあったなと思いました(笑)。

――Gugenkaさんは本作の開発を通じて、VRノベルゲームというジャンルのひとつを切り開かれたと思います。その土台となるシステムを作ってくださったのが阿部さんでしたが、苦労話などは何かございますか?

阿部氏:
私も、ノベルゲームの制作がやっぱり苦労した部分ではありましたね。いろんなことが未経験で。
確か開発の初期の方では、シナリオの演出を組む作業が珠珠つなぎのような形式だったんですけど、それだとどうしても演出制作の速度が出ない、といった意見をいただいたりもしました。それで改めて仕組みをまた理解し直して、経験があるやりやすい方法に持っていけたのは良かったなと思います。
おかげで私のゼロだった知識もだいぶ溜まってきまして、今はコマンドでシナリオが組めるようになりました。

 

 

◤◢◤ まとめ:皆さんへのメッセージ ◢◤◢

 

――まとめとして、今作を楽しみにしてくださっている観測者さん、これから今作に触れていくユーザーさんへのメッセージをお願いできますと幸いです。

姫路氏:
ずっとこのインタビューを通して言っていることではあるんですけど、VRって多分、体験されていない方のほうがずっと多いんですよね。神椿作品のファンの皆さんでも、大体の人はVR機器を持ってらっしゃらないかなと思っています。
でも今回、神椿市VRを開発させていただいたことによって、VRを体験するいいきっかけのひとつになるといいなと、これまでVRを開発してきた身としても思っています。
それにやっぱりVRを初めて体験する方、かつ神椿作品のファンの皆さんは多分度肝を抜かれると思うんですよ。

――「ここは度肝を抜かれるぞ」というシーンを、ひとつ挙げていただいても良いでしょうか。

姫路氏:
表現として一番心掴まれるなと思ったのは、やっぱり一番最初のシーンですね。観測室に入り、観測室から神椿市に入って化歩に出会うシーンです。
あのシーンはファーストインプレッションとして、これ以上ないくらいの演出だと思うんですね。「そこに花譜さんがいる。そして歌ってくれていて、こっちに気づいてくれている」という感動があって。VRに求められている、私が求めている要素全てを満たしている瞬間が、一番最初にドンとくるんです。

(化歩との出会いがVRでどのように描かれているのか、皆さんにはぜひともその目でお確かめいただきたい)

 

ファンの方ならもちろん知っているキャラというか、アーティストさんが目の前にいて、自分を認識してくれている。まず最初にガッとそういう体験ができるようになったので、そこに対して感動をまず一打受ける。読み進めていくと二打三打で、終盤になっていくともう打ちひしがれて立てなくなるぐらいの……(笑)。
そういう怒涛の展開が待ち受けているという、素晴らしい内容になっていると思ってます。
なので、やっぱりファンの方のみならず、VRユーザーもそうですし、全然この作品も知らない、VRも知らないという人たちにも、ぜひ届いてほしいなと。

また今回、海外に向けても発売をするので、本当に未知の世界にいる人たちにも神椿市の作品に触れていただくきっかけになればいいなと思いますし、感動してもらえたらいいなと思います。
私も作品としてちゃんと楽しめるのは発売した後だと思いますので、そこでまた私も楽しみつつ、皆さんの評判も楽しみにしていきたいなと思っていますので、ぜひお願いします。

阿部氏:
一観測者として忖度なくお話しすると、観測者の皆さんにはもう『REGENERATE』をプレイしている方が多いと思います。ですが、本作『VIRTUAL REALITY』は一から演出に手を加えている部分が大量にあるので、「やったからいいや」ではなく、ぜひ新たにプレイしてみてほしいなと思います。
ゲームをプレイした方でなくても、アニメや配信、ライブで知った人も手に取りやすい、入りやすい物語作品になってると思うので、ぜひ遊んでいただきたいなと思っております。
特に神椿市に住みたい人は本当に必見だと思っているので、住んでください(笑)。

(ただVRへと置き換えただけではない、本作ならではの神椿市での体験がプレイヤーを待っている)

 

――おっしゃる通り、『REGENERATE』をプレイされた方にとっても、同じ物語でありながらまったく違うゲーム体験になっていると思います。それではお二人とも、本日は誠にありがとうございました。

(インタビュアー:月島総記 / 記者:風雅宿)

【インタビュー記事】月島総記様

2026.04.02

【前置き】

 『神椿市建設中。』シリーズ最大規模の物語となるVRアドベンチャーゲーム、『神椿市建設中。VIRTUAL REALITY』が2025年12月19日に発売した。
 本インタビューでは、そんな本作を手がけたクリエイターの方々から、本作を巡る様々な想いについて伺っていく。
 記念すべき第一回は、本作の監督・メインシナリオ・世界観設定を務めた月島総記氏のお話を伺った。

 

 

◤◢◤ 自己紹介 ◢◤◢

 

――本日はよろしくお願いします。最初に、自己紹介とご経歴から伺えればと思います。

月島総記氏(以下、月島氏):
 本作の監督・メインシナリオ・世界観設定を務めさせていただきました、月島総記と申します。
 経歴としましては、2005年にスクウェア・エニックス小説大賞に入選してデビューして以降、スクウェア・エニックス様などで小説とゲームシナリオ、両方にまたがっていろいろな作品を書かせていただきました。
 代表作としましては、長編ノベルゲーム『ルートタブル』、『ファイナルファンタジーアギト』、それから『BATTLE OF TOKYO』といった作品になります。
 その他にも、シナリオ制作事務所『チーム月島』の代表として、弟の月島トラと共に、いろいろな作品を100作ほど作らせていただいておりました。

 

 

◤◢◤ 本作開発の経緯 ◢◤◢

 

――『神椿市建設中。VIRTUAL REALITY』開発の経緯についてお聞かせください。

月島氏:
 まず2019年11月、KAMITSUBAKI STUDIOのプロデューサーである操桃さんが、私の過去作品や活動に興味を持ってくださったんです。それで「神椿のアーティストを使った物語作品を作っていきたいんですが、ご興味ありませんか」という風にお声掛けいただきました。
 ちょうど当時『過去を喰らう』のMVがバズっていて、花譜さんを直前に知っていたということもあり、「えっ、知ってる!」という風になって、ぜひぜひという感じでそのお話に乗らせていただきました。

 

 そこから操桃さんを通じてPIEDPIPERさんに引き合わせていただいて、「どのような作品を作っていきたいのでしょうか」というお話を伺いました。
 それでPIEDPIPERさんからご依頼を受けて、PIEDPIPERさんと操桃さんと1ヶ月ほど連日壁打ちをすることになりました。その1ヶ月間で、現在の『神椿市建設中。』シリーズの大筋が出来上がった感じです。
 世界設定や舞台設定、主要なキャラクターたちについては、おおむねこの時点で決まっていました。

――2019年11月というと、V.W.Pの皆さんはまだ花譜さんと理芽さんしかいなかった頃ですよね。

月島氏:
 お声がけいただいた半月後に春猿火さんがデビューされて、ヰ世界情緒さんがそれに続く状況でした。ですからこのお二方に関しては、ご本人のデビューよりも先にキャラクターを作り始めていたという流れになります。
 PIEDPIPERさんからご本人たちの情報を伺ったり、どういうキャラにしたいかご希望を聞いたりしつつ、同時進行で作っていったという感じですね。
 また幸祜さんに関しては、神椿市建設中の制作が内々で本格的に動き始めた後でデビューされたという印象です。

 当時は私とPIEDPIPERさん、操桃さん、耐諷さん(過去に春猿火さん・ヰ世界情緒さんのプランニング・プロデュースを担当されていたスタッフさん)、それから私と会うのはもう少し後ですが、アニメ版のプロデューサーでもある秋山さんと、そんな小規模に始まったプロジェクトでしたけれども、このように6年も続いていろんな作品が派生していったのは感慨深くもあります。

――その流れで『神椿市建設中。EMERGENCE』が制作され、好評を受けて「ゲームも作ろう」というお話になったのでしょうか。

月島氏:
 私が神椿市建設中の世界観・キャラクターといったものを作る前から、PIEDPIPERさんの中で「ARG(代替現実ゲーム)を、『神椿市建設中』というタイトルでやる」という部分が決まっていたんです。しかし世界観などがまだほとんど決まってなかったので、そこを私が急いで作っていって、そのまま『EMERGENCE』にジョインしました。
 そして『EMERGENCE』を作っていく過程で「これはもっと大きなものにできそうだ」という風にPIEDPIPERさんが思われたのか、『EMERGENCE』の制作中に『REGENERATE』『NARRATIVE』といった作品を作り、広げていくという部分が決まりました。
 そういった経緯もあり、『EMERGENCE』の完結と同時に、派生作品群が発表されることになったわけですね。

(各タイトル発表時に公開された作品分岐図)

 

――制作中の段階で、もうそういう風にお話が固まっていたんですね。

月島氏:
 はい。『EMERGENCE』の開発って結構時間かかってるんですけど、その間に私はストーリー制作部分を終えていたんですよ。
 そのまま神椿市建設中の先行作である花譜さんのファンクラブ用小説『或る観測者の手記』の制作を始めて、同時進行で『REGENERATE』『NARRATIVE』、それからアニメーションの方も作っていったという流れになります。
 もちろん私だけではなく、本当に様々な方々が関わり合い、個々の作品ができていきました。各作品にはそれぞれの監督や、主要制作者がいらっしゃいます。
 私は世界設定&監修担当として、そういった素晴らしいクリエイターの方々と共にシリーズの歴史を紡がせて頂きました。本当に光栄であり、幸福な日々でした。

 

◤◢◤ 本作で担当された範囲について ◢◤◢

 

――それでは、本作でのご担当範囲についてお伺いできますでしょうか。

月島氏:
 私は神椿市シリーズのほぼ全作品のストーリーデザイン・監修・世界観設定を担当させていただいています。
 『或る観測者の手記』に始まって『EMERGENCE』、『NARRATIVE』、『REGENERATE』、アニメーションといった作品に参画させていただいたのですが、その中核になるというか、ひとつの最終目標として手がけていたのが本作になります。
 担当範囲はまず監督、メインシナリオ、世界設定。それから音響監督とバトルプランナーも兼任させていただいております。
 私一人の力では絶対にこの量はできなかったと思うし、本当に皆さんに助けられながら、ここまでやってこられました。

――音響監督をご担当されることになった経緯について、詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか。

月島氏:
 これも自然の流れと申しますか、監督という立場から本作のすべてに関わっていったわけですけれども、本作は何より音楽・音響が重要な作品ですよね。
 なので、そこにこだわる、つまり作品にぴったり寄り添った声や音楽、効果音といったものを用意していくとなると、必然的に音響監督の立場も兼任するようになったという感じです。
 私自身は音響監督であるっていう認識は途中までなかったんですけど、BGMを担当してくださった朝比奈さんに「月島さんは音響監督ですよ」とおっしゃっていただき、初めて自覚しました(笑)。
 でも尊敬かつ信頼している朝比奈さんが太鼓判を押してくださったならと、責任を持つ意味でも、そう名乗るようにしました。
 確かに私は、本作のボイス収録のすべてに演技指導も含めてタッチしており、BGM・挿入歌の発注ややり取りもすべてやっておりましたので、音響監督と言って差し支えないのかな、と感じております。

 余談ですが、アニメーションの柿本監督も監督・シリーズ構成・音響監督とクレジットされています。おそらく私と同じように、本作に向き合ったら自然と音響監督になったという形なのではないかなと思っております。

(本作に登場する100曲以上の楽曲の多くは、月島氏と作曲家の方々が綿密な相談を重ねながら作られた)

 

――作品全体に寄り添っている立場だから、そのまま音響についてもということですね。

月島氏:
 そうですね。また、お互いこだわりが強いタイプだと思います。

 あまり慣れてない業務ではありましたが、過去に関わった作品で「こういう作品の場合は、作品と音楽を組み合わせていくことにはすごくこだわった方がいいな。監督的立場の人間がしっかりやった方が、絶対作品としてはいいものになるな」というのをかなり強く感じてもいました。

 なので本作もしっかりやるべきだなと思い、かなりの大役で相当な数がありましたけど、VRディレクターの姫路さん、助監督兼アドバイザーの佐藤康之さん、それからTHINKRさんのプロジェクトマネージャーさんと一緒にやらせていただきました。

 

 

◤◢◤ キャラクター、世界観、ストーリーの制作について ◢◤◢

 

――本作のキャラクターや世界観、ストーリーをどのように制作されたかについて、お話を伺えればと思います。

月島氏:
 本作の場合、具体的な世界観よりも『描きたいテーマ』が、まず先ににありました。
 『人の想いが集まることによって生まれた世界』という設定は、私が参加する前から、PIEDPIPERさんのアイデアとしてあった形でした。
 では、人の想いが集まることによってできた街とはいかなるものか? というのをいろいろと考えていった結果、『フラグメント』『テラリウム都市』『情報物理学』といった設定が生まれていきました。

 神椿市の成り立ちと、それを支えるフラグメントといった世界観の根幹部分は、1ヶ月かなりハードな打ち合わせをして、PIEDPIPERさんの想いを形にしていったんです。その段階で、おおよそ今の世界観は固まっていたといった感じですね。

――テセラクターなどの設定も、その段階で全て決まっていたんでしょうか?

月島氏:
 人の想いが集まって出来上がった世界という風に考えれば、悪しき想いも集まってくるだろう、良い想いも集まってくるだろう、という風に考えていくうちに、テセラクターという設定が生まれていました。
 化歩たちは魔女である、未熟だが魔女だから『魔女の娘』であるという設定が最初にあり、魔女と対比になるものだったら悪魔かなと思って設定をしていたんですけれども、そこでもうちょっとSF方面によせてみようという話をいただきました。
 それでPIEDPIPERさんにご助力というか、言葉のセンスに関してはあの方には敵いませんので、どんどんPIEDPIPERさんにワーディングをお願いしていっていたんです。そうしたらSF的な科学要素を入れたいという考えから、「超立方体テセラクトってあるよね」という話が出て、『テセラクター』という存在が生まれたという形です。

――想いがメイン軸にあるファンタジーを詰めていくうちに、SF要素が入っていったと。

月島氏:
 ただ、PIEDPIPERさんのほうには、「魔女というキーワードを使うが、SFに寄せる」という考えは最初からあったようです。私もPIEDPIPERさんと議論を重ねるうちにそういった部分を理解していき、最終的にはSFダークファンタジー、つまり「SFでもあるがファンタジーでもある。魔法として語られることには、ちゃんと科学的な考証がある」という形で設定を作っていったという流れですね。
 私が参加する前からあった、花譜さんが主題歌『魔女』を担当された『KOTODAMA TRIBE』(PIEDPIPER氏と耐諷氏が主要メンバーとして参加されていたプロジェクト)という、神椿市の前身となるようなプロジェクトも、現在確認できる情報から見ると結構SF寄りの設定になったんじゃないかなという印象ですし、PIEDPIPERさんの中ではSFをやりたいという気持ちがあったのだと思います。
 でも私と話しているうちに、魔法を出したり、ファンタジーをSF的解釈で描くという風に方向性が定まっていきまして、現在の神椿市につながっていったという感じになります。

――SFとファンタジーの要素が同居した世界観は、そういう風に作られていったんですね。

月島氏:
 こうやって世界観、つまり現実世界に生きる人々の想いが集まってできる街という根幹設計が生まれました。
 であれば、後にV.W.Pと呼ばれる方々の歌に込められた想いが、本作の世界やキャラクターに強く影響を及ぼしているということにしよう、という設定ができあがりました。
 それから本作のキャラクターたちには、元となるアーティストさんがいます。けれどもみんな元となるアーティストさんをそのまま描くというよりは、元となるアーティストさんの歌から生まれたキャラクターたちという方針でキャラクターを作っています。
 例えば花譜さんの歌っていうのは、等身大の少女の想いだったりとか、カンザキイオリさんがご担当されていた楽曲の一連の……なんて言うんだろうな。

――楽曲の世界観などが反映されている、ということでしょうか?

月島氏:
 そうですそうです。当時はほとんど全ての楽曲をカンザキさんが制作されていましたが、地に足のついた世界観、でもちょっとレトロで懐かしく、どこか悲劇の匂いが漂っている、暖かいけど痛みもある、そんな世界観が描かれていました。
 なので森先化歩のキャラクターというのは、そういう風に暖かいけれども痛みを抱えたキャラクターとして作られていきました。それに伴い零番街も、「少しレトロで懐かしいところがあるけれども、一歩踏み出した先には悲劇がある」というような世界観になっていったという感じですね。
 また何より、当プロジェクト黎明期の中核メンバーだったもの久保先生が、そういった世界観を素晴らしいイラストにしてくださいましたので。それを物語上で再現するのが私の役目だと強く思いました。

(少しレトロで懐かしさを感じる、零番街の街並み)

 

――他の魔女の娘とそれぞれが暮らす街も、そのようにして作られていったんでしょうか。

月島氏:
 仰る通りです。谷置狸眼の場合は、理芽さんの一連の楽曲にある思春期の不安定さや、ルナティックな世界観、そして何より恋の歌が多いと思いますので、狸眼のストーリーのテーマは、やはり『ロマンス』であるべきだと思いました。
 それは『EMERGENCE』の頃に描かれた化歩とのシスターフッド的関係もそうであるし、この先で描かれる狸眼の物語も、やはり理芽さんがライブの中でおっしゃった『ニューロマンス』、つまり人と人の新しい形の繋がり、「ちょっと普通じゃないけれども、確かな絆で結ばれている者たち」の物語として描かれていきました。
 そして壱番街も、理芽さんの楽曲の中に出てくる歌詞で、断片的に描かれている街並みといったものを、なるべくそのまま物語世界にしていったという感じです。

(理芽さんの楽曲や公式アートの世界観を反映した壱番街)

 

 春猿火さんはやはり女性ラッパーであるということもあり、ヒップホップカルチャーを下敷きにした楽曲というのが多いと思うんですけれども、ヒップホップカルチャーを踏まえた世界観ということで、弐番街はああいった雑多な世界になっていきました。
 一方で自分の弱さに悩みもがき、でも強くあろうと頑張るという前向きな気持ちは朝主派流のキャラクターにそのままなっていきましたし、ホーミィ(地元の仲間)やホームタウンへの想いであったり、底辺から天辺まで駆け上がろうとする部分ですとか、そういった世界観がそのまま弐番街、そして本作の派流に繋がっていっているという形ですね。

(派流のキャラ性やストーリーも、春猿火さんの楽曲と活動が基となっている)

 

――夜河世界と参番街についても、やはり同様の流れなんでしょうか。

月島氏:
 私が夜河世界というキャラクターを作り始めた時、ヰ世界情緒さんの楽曲はまだ『物語りのワルツ』しかなかったんですけど、あの歌で描かれている世界が、わりとそのまま夜河世界と参番街の在り方に繋がっていきました。
 楽曲が追加されるごとに各キャラクターの膨らみが増していったんですが、ヰ世界情緒さんの場合は、どこかダークなファンタジーやオカルトを感じさせる歌詞に、「被検体」といった不穏なワードが描かれている一方で、世界を愛するような気持ちがあふれたとても美しい曲もあるので、参番街はそういう二面性がある街になっていきました。
 そして夜河世界もそれに対応した、いわば二面性のある、Aの要素からBの要素に移行していって、というキャラクターになったんですね。

(夜河世界のキャラクター性は、ヰ世界情緒さんご本人の活動に強い影響を受けている)

 

――アーティストさんの活動の進展が、それぞれのキャラクターと世界観にも影響を及ぼしていったということですね。

月島氏:
 まさしくそうです。初期の楽曲、つまり制作している時にあった曲の方が、やっぱりキャラクターや世界観の根幹になってることが多いんです。ですが曲が増えていくうちに、どんどんこういう世界観もあるんだという風になり、単純な世界・単純なキャラからどんどん深みを増していったという流れですね。

――輪廻此処についてはいかがでしょうか。幸祜さんのデビューは、制作が内々で本格的に動き始めた後だったとのことですが。

月島氏:
 輪廻此処については、幸祜さんのデビュー曲『harmony』からもう既に、神椿市建設中にすごく合っている曲だなという風に思いました。初期楽曲群は特に「守る」とか「救う」とか、そういったワードが見え隠れするというキャラクターでしたので。
 今では幸祜さんは素の部分が愛されるアーティストさんになっているかもしれないですけれども、デビュー当時の幸祜さんは「秘密」というのが一つのキーワードになっていました。アーティストご本人は謎を秘めた女性、キャラクターは一歩進んで記憶喪失の女性という形でやっていったというわけですね。

(幸祜さんのチャンネル最初の動画『No.000 幸祜 – koko –』。
自己紹介に『他はまだ、秘密です。』とあるなど、
デビュー当時の幸祜さんは『秘密』をキーワードにしたアーティストだった)

 

 そういう風にキャラクターと世界観が決まっていけば、あとはストーリーというものが自然と生まれてくるものでして。このストーリーも各アーティストさんの楽曲群から見え隠れするストーリーを当てはめていくし、例えば化歩であれば『痛みを』という曲が、狸眼であれば『ジュブナイル』という曲がぴったりはまるようなストーリーを作っていきました。

――ストーリーよりも先に、それを当てはめていくべき曲があったわけですね。

月島氏:
 ストーリーに合わせた曲を作っていただくこともあるんですけれども、やはりそうですね。各アーティストさんの楽曲の中で、魔女の娘名義で発表されている曲、『痛みを』『ジュブナイル』『Ambition』『生きていく光は』『Mayday』『÷』(ディバイド)、『あわく心模様』といった楽曲群は今作の世界観、ストーリーへ特に強く影響を与えておりますし、これらの楽曲がテーマソングとしてはまるようなストーリーを作っていこうという風に作っていったんですね。

――ストーリーに合わせた曲を作っていただくこともあるとのことですが、そちらはどういった曲があてはまるんでしょうか。

月島氏:
 『真偽』『神話』『反逆』『決意』、それから『流転』などですね。この辺りの楽曲は、ストーリーが出来上がってから作られました。
 なので本作の制作は常に、アーティストさんの活動、それから歌われている楽曲群と両輪で共に進んでいきましたし、切っても切り離せないものになっている。そういうライブ感のある制作になったと感じています。

――完全に不可分な形で進んでいたんですね。

月島氏:
 そうですね。離れてしまっては嘘になってしまう、アーティストさんの活動に関係なく、「こういうストーリーをやりたいからやる」というのでは、わざわざこうやってアーティストさんを元にしたキャラクターを作る意味も、そういうストーリーを作る意味もないと思われます。
 なので本当にこの6年間、V.W.PとVALISの皆さん、CIELさんとAlbemuthさん、他様々な本作に参加されていないアーティストさんも含めてKAMITSUBAKI STUDIO、SINSEKAI RECORDのいずれも曲を聴きまくり、そしてそこから離れないように作っていきました。

――お話をお伺いしているだけでも、月島先生の想いが伝わってくるというか、執念にも似た想いを感じますね。

月島氏:
 とんでもないです。執念かあ(笑)。

――執念というと、負のイメージみたいになってしまうかもしれないんですが。

月島氏:
 いえ、象徴的だなと思ったんですね。私は「それは愛ですよ」と言おうとしたんですけど、神椿市建設中の物語の『愛』っていうのは、往々にして『執念』になりがちだなと(笑)。ネタバレになるので名前は伏せるんですが、本作の一部のキャラクターを見ているとそう思いますね(笑)。
 確かに人の想いから出来上がる世界という意味で言えば、本作の裏にいる上位存在たちというのは、とりもなおさず制作者である我々の二つの面であろうという話でありまして。
 一方は神椿市が存続してほしいという我々の愛と執念の具現化であり、もう一方はスクラップ&ビルドこそが先へと続いていく道だという、創造の一側面かもしれない残酷な考え方の具現化である。
 そういった我々の作品に対する二つの思いの具現化だよなという話をしていた時に、神椿市の世界観が定まってきた、どういう風にこの作品を作っていけばいいかが見えてきた、というのがありますね。
 そこから外れないように作っていこうという話は、PIEDPIPERさん、操桃さん、耐諷さんと何度か話しておりました。

――らぷらすたちファミリアも、魔女の娘たちのキャラが決まって、世界観が決まってという流れで、おのずとキャラが固まっていったんでしょうか?

月島氏:
 そうですね。らぷらすとはすたーについては、先にPALOW.さんの絵があったという感じです。花譜さんは当時『雛鳥』の衣装でフードを被っていましたが、「そのフードがモンスターだったら」という気持ちから『フーディーモンスター』という設定が生まれて、そしてらぷらす、次いではすたーが生まれていったと伺っております。
 しかしPALOW.さんご自身も、描いてはみたけど「これ何だろう?」って話をしていて(笑)。

(『第一形態:雛鳥』衣装の花譜さんのデザイン画。
フードがモンスターの頭然としていることがわかる)

(やがてこのフーディーモンスターは、らぷらすという名を得てキャラ化され、後に繋がる)

 

 そこにPIEDPIPERさんと私が考えたテセラクターという要素が付加されて、「魔女の娘は善なる想い、世界を存続させようとする想いの化身である。であればこれは世界を破壊する者たちの想いであり、魔女の娘と対比になる存在だ」となり、であればどういうキャラクターだろうと考えていきました。
 そして、5人の魔女の娘それぞれの対比であり、互いを深める補完関係のある存在として生まれていったという感じですね。

――ということは、『過去を喰らう』のMVに映っていた時のらぷらすは、まだ謎のフーディーモンスターだった?

月島氏:
 そうです、謎のフーディーモンスターでした。
 私が一番最初に見て衝撃を受けたのが、まさに『過去を食らう』のMVだったんですが、MVの中で2次元になったり3次元になったりしているけど、これはどういう生物なんだろうということを詰めていく過程で、『多次元生命体テセラクター』という設定が生まれています。
 だから、すべての出発点は楽曲でありMVでありイラストだったんですよ。制作の起点は常にそこで、ストーリーはそこを目指していった。本作の物語と世界観は、歌と絵と映像を基に生まれたという感じですね。

 もう一つ重要だったのは、本作の開発はいつだって、観測者さんと共にあったということですね。だって本作も、V.W.Pの皆さんの活動も、やっぱり観測者さんあってのものじゃないですか。
 だから我々制作スタッフも、観測者さんと直接対話する機会はめったにないのだけれど、でも私たちは確かなつながりを感じていて、常に忘れないようにしています。
 たとえば実は本作のアイデアっていうのは、神椿市の公式Discordの中から生まれているものが結構あるんです。一番わかりやすいのが、序盤の強敵となるテセラクター『でかると』ですね。

(序盤の強敵となるテセラクター『でかると』)

 

 『EMERGENCE』運営当時に、「らぷらす、はすたーというキャラクターがいるのであれば、他にどういうテセラクターがいるのだろう?」と議論していた方々が居たんですよ。らぷらすは思考実験の『ラプラスの悪魔』から生まれているのが明らかだから、なら他に思考実験上の怪物と言ったら『デカルトの悪魔』じゃないかという話をされていたんです。

――でかるとにそんな由来があったとは、知りませんでした。

月島氏:
 あんまり話すとネタバレになってしまうんですが、私は公式Discordが始まってからの6年間ずっとウォッチしてきて、皆さんのお話がアイデアのもとになり続けました。
 そして神椿市建設中を追ってきてくださった観測者さんたち、『EMERGENCE』や『NARRATIVE』、アニメーションを見られた方の感想であるとか、そういったものも逐一作品にフィードバックしていこうという思いが強くなりました。
 それがどのような形で反映されているのか、本作をプレイしていただければ分かる部分もあるかと思います。

――観測することで相互に影響を与えあうという話は本作でも言及されていますが、神椿市建設中というコンテンツ自体がそういう風にできていたんですね。

月島氏:
 まさしくそうです。観測することによって影響を与える、観測者と被観測者の量子論的な繋がりというのが本作の裏テーマなんですが、観測者さんは常に本作を前に進める推進力となりました。
 観測者の皆さんに、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。

 

 

◤◢◤ 力を入れた所や見どころについて ◢◤◢

 

――では、本作の開発において特に力を入れられた点や、見どころについてお伺いできればと思います。

月島氏:
 メインシナリオ担当としてはやはりストーリーと申し上げたいところですけれども、監督の立場からすると、特に力を入れた点と言うのは本当にたくさんあります。
 先行作である2D版ノベルゲーム『神椿市建設中。REGENERATE』から全てを進化させようと、各担当者さんはそれぞれの領域において、本当に尋常じゃない努力をしていただいたと思っております。
 中核スタッフだけでも、Gugenkaの姫路さん、阿部さん、五十嵐さん。スクリプトはレジスタの佐藤康幸さんと佐藤大助さん、Gugenkaの木下さんに彦坂さん。メインキャラデザインはPALOW.さん、BGMは朝比奈さん、作中ムービーは川サキさん、背景は藍上さんにEallin Japanさん、そして神椿物語研究開発部の皆様も……
 それから本作は海外向けにも発売するのですが、ローカライズは翻訳者のJohn Hooperさんと張さんのお二人の力をお借りして進めさせていただきました。
 このまま上げていったら、さすがにキリがないですね。特に力を入れた点は、私個人としてはストーリーであり、監督の立場からすると『すべて』ということでお願いいたします。
 ちょっと模範解答的ですけれども、本当にそう思いますので。

――では、見どころの方はいかがでしょうか。

月島氏:
 私が個人的にご覧いただきたいなと思っているのは、やっぱりVRゲームならではの没入感ですね。ほぼ同じストーリーでも全然没入感が違う、という風になると思います。神椿市に本当に行けるような、そういうゲーム体験になると思いますので、そこをご覧いただければと思います。
 現状、世界で一番大規模で、すべてにおいて凝っているVRノベルゲームを作ろうとしたという自負はあります。世界で初めてのタイトルを目指して作っていった作品なので、演出、音楽、歌の動き、それから大幅に臨場感の増したパトルパートを楽しみにしていただければと思います。

(圧倒的没入感のストーリーパートと、大迫力のバトルパート)

 

――規模と言いますと、プレイ時間約40時間というのはVRゲームでは類を見ない規模ですよね。しかもバトルや歌唱シーンもあるとなると、かなり巨大な作品という印象です。

月島氏:
 この開発規模でこれだけの巨大な作品を作れたのは、本当に今作に関わる全ての方々のご助力のおかげです。
 一方で、作品としてあまり長大になりすぎないようにもしています。ストーリーはいくつもの章に区切られてコンパクトに遊ぶこともできるし、バトルパートだけ遊んでも楽しく、それはワンプレイ5分以内である。そういう風にボリュームだけではなく、ゲームとしての遊びやすさもかなりいろいろ考えて作りました。
 この後の開発会社のGugenkaさんのインタビューで、そのことを詳しく語ると思いますので、よろしくお願いいたします。

 

 

◤◢◤ ここだけの話 ◢◤◢

 

――ここからは、ここだけのお話などをお伺いできればと思います。

月島氏:
 先ほどのでかるとの件とか、ここだけの話を織り交ぜつつ話してしまったなと思いますけど、そうですね。
 スタジオのファンの方々にとっては、深脊界スタジオと神椿スタジオの関係は気になるところだと思いますけど、これは公式で公表されている通り、『座標は近いが別の街』です。深脊界の方に出てくるキャラクターと本作に出てくるキャラクターの見た目が似ていることがあったとしても、それは別の人たちです。ということはお話ししておこうかな。

(神椿市とは似て非なる別世界『深脊界』。その世界観設定とストーリーデザインも月島氏が担当した)

 

 あとは既にご存じの方も多いかもしれませんが、本作はクリアした後にダウンロードコンテンツのシナリオがあります。本編と同じくらいとは言わないけれども、かなりの分量の『その先』の物語が用意されています。
 7つのシナリオが用意されていて、その中には一風変わったシナリオや、意外なキャラがメインとなるエピソードもございます。
 なので『REGENERATE』をプレイされた方にも、ぜひ本作をプレイしていただきたいですね。同じストーリーでありながら全く別の世界が本編で描かれていたり、新しいその先の物語が用意されているなど、『REGENERATE』をプレイされた方も楽しめるかなと思います。

 

 

◤◢◤ まとめ:本作にかける想い ◢◤◢

 

――それでは最後に、本作にかける想いや本インタビューをご覧になっている方々へ向けたメッセージをお願いします。

月島氏:
 神椿市は人の想いでできている、という話を最初にさせていただきましたが、『神椿市建設中。VIRTUAL REALITY』は、まさしく本作に加わられた全ての方々の想いが、集積して出来上がった作品だと思います。
 KAMITSUBAKI STUDIOの初期の頃からの要素も、その時期に関わられていた方々の想いも、できるだけすべて取りこぼすことなく、作品へ取り入れてきたと思っています。制作側だけではなくて観測者の皆さんの想い、もちろんアーティストさんたちの想いも、その一つの集大成として本作を制作させていただきました。私だけではなく、皆さんの想いが結実したものになっていると思います。
 もちろん、そういう想いを反映しただけではなく、作品としても私の100作あまりのキャリアの中で最も気合を入れた、最も良き作品、最も面白い作品の一つだと私は思っております。
 観測者の皆様にとっても、そうであることをお祈りしております。

 次回は開発を担当されたGugenkaさんのインタビューです。制作サイドから、本作の物語について語られていきます。
 私は今回インタビューを受ける側でしたが、次回からはインタビュアーとして、本作に関わられた皆さんの想いを探っていく旅に出かけようと思います。

――ありがとうございました。

(インタビュアー:風雅宿)

神椿市建設中。VIRTUAL REALITYの多言語対応情報についてのお詫び 

2025.12.22

2025年12月19日(金)発売「神椿市建設中。VIRTUAL REALITY」につきまして、発売時点での対応言語が日本語のみとなっており、混乱を招いていることについて改めてお詫び申し上げます。

英語・簡体字・繁体字対応につきましては、2026年の早い時期にアップデートでの対応を予定しております。
具体的な日程は現在調整中となりますので、確定し次第改めてお知らせいたします。

本来であれば、多言語対応が発売後のアップデート対応となることについて、発売前に明確なアナウンスを行うべきでした。 また、発売後のご案内につきましても、情報提供が遅れ、混乱を招いてしまったことをお詫び申し上げます。

今後は、対応状況やスケジュールについて、より適切なタイミングでお知らせできるよう、情報発信の方法や運用体制の改善に努めてまいります。 英語・簡体字・繁体字でのプレイを楽しみにお待ちいただいていた皆様のご期待に添えなかったことを重ねてお詫び申し上げます。

対応まで今しばらくお待ちくださいますようお願いいたします。

神椿市で活躍する化歩をご紹介

2025.12.18

本作の物語をあなたとともに歩むキャラクターを紹介するPVです。


・森先 化歩(CV. 花譜)



配信ガイドライン

2025.12.18

【配信に関するガイドライン】
▼ガイドラインの対象
動画配信サイトへの投稿を対象とします。

▼対象となる動画・画像
動画・画像はご自身がプレイしている動画・画像、プレイを実況している動画、感想等のコメントを併せて投稿するものに限ります。

▼対象となる動画配信サイト
「YouTube」「ニコニコ動画」等の動画配信サイトであり、株式会社NexTone及び一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)と楽曲に関する利用許諾契約を締結しているサイトに限ります。
上記に該当するサイトであっても、18歳以上のみを閲覧対象としたサイト、及び当社が不適切と判断したサイトは含みません。
投稿にあたっては、投稿先の動画配信サイトの利用規約・ガイドライン等を遵守してください。

▼禁止事項
以下に該当する投稿はこれを禁止します。
・ご自身による解釈や編集などの創作的要素(実況や感想など)が加わっていない、本編中の映像・画像・楽曲等をそのまま投稿・公開・配信する行為
・本ゲームの内容を正しく把握することを妨げる過度な編集や加工はしないこと
・営利目的での投稿を行わないこと※ただし、投稿した動画配信サイト上のシステムを用いた収益化については、本ガイドラインの解釈に限り、営利目的とはみなしません
・公序良俗に反する内容を含めたり、違法な情報と組み合わせたりしないこと
・本ゲームに対する改造や解析の結果など当社が公表していない要素を含む投稿をしないこと
・第三者が作成した動画またはスクリーンショットを無許諾で転載しないこと
・本プロジェクトに関わるキャスト・スタッフを含む第三者の権利(肖像権、パブリシティ権、名誉声望を含みこれらに限りません)を侵害するもの
・チート、不正アクセス、不正な改造などの方法でゲームをプレイしている投稿
・当社ゲームの適切な提供・運営を妨げる投稿
・事実に反して本作から協賛、提携、その他一切の公認・承認を受けている示唆をするまたは誤信させる内容を投稿すること
・上記禁止事項に該当するおそれがあると当社が判断する投稿
・メンバーシップなどのサブスクリプションサービスを使用した有料会員登録者限定の動画投稿・動画配信

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ネタバレを含む投稿については、注意書きを行うなどの他のお客様への配慮をお願いします。

▼著作権表示
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©KAMITSUBAKI STUDIO

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ガイドラインは当社の判断で変更される場合があります。動画投稿の都度、最新版をご確認ください。

2025年12月18日制定

理芽が本作の狸眼の章「ニューロマンス」を実況

2025.12.18

谷置 狸眼を演じた理芽が本作の「PLAYER」を実況しました。


魅力的な歌唱シーンやバトルシーンを理芽とともにお楽しみください。



幸祜が本作の此処の章「PLAYER」を実況

2025.12.18

輪廻 此処を演じた幸祜が本作の「PLAYER」を実況しました。


魅力的な歌唱シーンやバトルシーンを幸祜とともにお楽しみください。



神椿市で活躍する狸眼をご紹介

2025.12.18

本作の物語をあなたとともに歩むキャラクターを紹介するPVです。


・谷置 狸眼(CV. 理芽)



神椿市で活躍する派流をご紹介

2025.12.18

本作の物語をあなたとともに歩むキャラクターを紹介するPVです。


・朝主 派流(CV. 春猿火)



神椿市で活躍する世界をご紹介

2025.12.18

本作の物語をあなたとともに歩むキャラクターを紹介するPVです。


・夜河 世界(CV. ヰ世界情緒)



神椿市で活躍する此処をご紹介

2025.12.18

本作の物語をあなたとともに歩むキャラクターを紹介するPVです。


・輪廻 此処(CV. 幸祜)



神椿市で活躍する詩得をご紹介

2025.12.18

本作の物語をあなたとともに歩むキャラクターを紹介するPVです。


・彩季 詩得(CV. CIEL)



 


神椿市で活躍する亜留・阿栖をご紹介

2025.11.17

本作の物語をあなたとともに歩むキャラクターを紹介するPVです。

・天祢 亜留(CV. 存流)
・地邑 阿栖(CV. 明透)

 

神椿市で活躍する瓦利斯をご紹介

2025.11.17

本作の物語をあなたとともに歩むキャラクターを紹介するPVです。

・白銀 千埜(CV. CHINO)
・常盤 魅優(CV. MYU)
・紅谷 呐斐(CV. NEFFY)
・水鏡 丹那(CV. NINA)
・藍染 羅螺(CV. RARA)
・裏葉 命(CV. VITTE)

 

神椿市の風景をご紹介

2025.11.17

本作の舞台である仮想都市「神椿市」を紹介するPVです。
運命にあらがう物語が展開される舞台の一部をご覧ください。

ヰ世界情緒が本作の世界の章「Anima」を実況

2025.11.17

夜河 世界を演じたヰ世界情緒が本作の「Anima」を実況しました。


魅力的な歌唱シーンやバトルシーンをヰ世界情緒とともにお楽しみください。



春猿火が本作の派流の章「シャーマニズム」を実況

2025.11.17

朝主 派流を演じた春猿火が本作の「シャーマニズム」を実況しました。


魅力的な歌唱シーンやバトルシーンを春猿火とともにお楽しみください。



花譜が本作の序章「不可解」を実況

2025.11.17

森先 化歩を演じた花譜が本作の序章「不可解」を実況しました。


魅力的な歌唱シーンやバトルシーンを花譜とともにお楽しみください。




本作の開発者からおすすめポイントをご紹介

2025.11.18

本作の開発には数多くのプロフェッショナルが関わってくださっています。
各プロフェッショナルからおすすめポイントをいただきましたので、ご紹介いたします。

【12月16日更新】

<三林裕美:経歴>
イラストレーター。Gugenka所属。
MIKU LAND/ワールドデザイン
プリキュアバーチャルワールド/ステージ・プロップデザイン
KAMITSUBAKI COLLECTIBLES -御伽噺- Limited Edition /衣装モデリング など

 

【12月9日更新】

<サボンテ:経歴>
Gugenka所属 XRデザイナー。XRコンテンツの幅広いデザイン制作を手がける。Sanrio Virtual Festival 2023-2025 (World UI・Website) /涼宮ハルヒ「無敵的ハピネス」MV / 初音ミク 夜空プログラム(MV・Website・Goods) など

 

【12月2日更新】

<風雅宿:経歴>
シナリオ制作事務所『チーム月島』所属。『神椿市建設中。NOVELIZED』共著。

 

【11月25日更新】

<木下大輔:経歴>
XRエンジニア。Gugenka所属。
KAIJU DECODE -super multiverse MR- / MRゲーム開発
IMAGINARY BASE AKIHABARA MR体験 / コンテンツ開発

【11月18日更新】

<阿部 英輝:経歴>
XRエンジニア。Gugenka所属。
VRコンテンツをはじめ、施設体験型アーケードゲームやARライブなど、幅広い分野の制作を手がける。
コミックマーケット103 V.W.P MR体験 / コンテンツ制作
東京ゲームショウ2023 花譜 MRアーカイヴ(追憶)/ コンテンツ制作
prompt αU Digital Figure MR / コンテンツ制作
MIKU LAND COLLECTION 2024 Fashion Show
初音ミク 夜空プログラム 音楽花火

 

【11月11日更新】

<バース マーヴィン:経歴>
株式会社マンカインドゲームズ、CTO


<マギー カイル:経歴>
株式会社マンカインドゲームズ、エンジニア所属


<コリノ ジャコモ:経歴>
株式会社マンカインドゲームズ、エンジニア所属


<秋元 岳:経歴>
株式会社マンカインドゲームズ、エンジニア所属

 

【11月4日更新】

<月島トラ:経歴>
小説家・ゲーム制作者。
実兄の月島総記と共に、小説・ゲーム・アニメなど、100を超える作品を共同制作してきた。
代表作の『ファイナルファンタジーアギト』では、シナリオ・世界設定・ノベライズを担当。優れた物語性と緻密な設定構築力により高い評価を得た。
他の参画作品は『INGRESS THE ANIMATION』『ルートダブル』『咲うアルスノトリア』など。いずれもストーリーが好評を博し、メディア化をも果たしている。

 

【10月28日更新】

<佐藤大助:経歴>
スクリプター・演出家。レジスタ所属。
90年代~20年代にかけ、『メモリーズオフ』『I/O』『ルートダブル』『リベリオンズ』『祝姫』など、時代を彩った名作群に多数参画した超ベテラン。
代表作の一つ『Ever17』は、様々なクリエイターに多大な影響を与え、今なおリメイク版や精神的続編が作られる不朽の名作。
豊富な制作経験によって培われたスクリプト技術を駆使し、VRノベルゲームという新分野を切り拓くパイオニア。

 

【10月21日更新】

<佐藤康幸:経歴>
ゲーム監督・演出家。レジスタ所属。
名作ノベルゲーム『Remember11』『CROSS†CHANNEL』『ナルキッソス』『祝姫』『新宿葬命』などを、監督あるいは共同監督として多数手がけた。
代表作の一つ『ルートダブル』は、複数のゲームアワードを受賞し、コミカライズやノベライズなども展開。
卓越した演出力と、膨大なノウハウで当プロジェクトを支える、ノベルゲーム界のレジェンド。

 

【10月14日更新】

<姫路拓也/経歴>
Gugenka XRエンジニア所属。2016年頃のVR黎明期よりVRコンテンツの開発を行う。代表作 スマホVRアプリ「Re:ゼロ VRで異世界生活」 / 美少女戦士セーラームーンEternal 「VR DREAM・FLIGHT」 / VRシネマ「怪獣デコード KAIJU DECODE -first contact-」など

 

【10月7日更新】

<藍上アオイ/経歴>
CIEL LIVE SHOWCASE at VRCHAT / VRChatワールド 背景モデリング
CIEL 1st VIRTUAL LIVE「空想劇-神椿市伍番街-」 / VRChatワールド 背景モデリング
花譜 4th ONE-MAN LIVE「怪歌」 in 代々木第一体育館 / オープニング映像 背景モデリング
花譜 4th ONE-MAN LIVE「怪歌(再)」 in 幕張メッセ / オープニング映像 背景モデリング

 

【9月30日更新】

<川サキ ケンジ/経歴>
映像ディレクター。EallinJapan・KAMITSUBAKI STUDIO所属
3DCG・セルアニメーションに造詣が深く、PVやCM、インタラクティブなど様々な映像作品を手がける。
花譜「過去を喰らう」MV
ヨルシカ「心に穴が空いた」MV
星街すいせい「ソワレ」MV
不可逆性SNSミステリー「Project:;COLD」
Instagram WebCM 2022 「好き、ぞくぞく、つづく」
など

 

【9月23日更新】

<朝比奈健人/経歴>
TVアニメ「神椿市建設中。」、「最凶の支援職【話術士】である俺は世界最強クランを従える」、Webアニメ「原神〜グゥオパァー~」などアニメ劇伴音楽を多数手掛ける。
神椿関連の作品は、ライブBGMやアルバムのOP&ED、ゲーム音楽の作編曲を手掛けるだけでなく、歌唱曲の編曲を手掛けることも多い。
また、フィルムコンサートの生オーケストラアレンジにも携わる。

 

【9月16日更新】

<月島総記(別名義:紫)/経歴>
作家・ゲーム制作者。25歳でスクウェア・エニックス小説大賞を初め、5つの小説・シナリオ・映画脚本の賞を連続受賞してデビュー。
以後『ファイナルファンタジーアギト』『ルートダブル』『リベリオンズ』『BATTLE OF TOKYO』といった大作・名作を多数手がけてきた。
『神椿市建設中。』では、シリーズを通じてシナリオ・世界観設定・監修などを担当。SINKA LIVEシリーズの設定制作や、V.W.PのMVのストーリー執筆等も務める。

本作の特徴をご紹介【都市開発通信】

2025.11.17

2025年9月12日に放送した「都市開発通信」にて、本作の特徴をご紹介しています。


ぜひご覧ください。



 


神椿市建設中。VIRTUAL REALITY本編+グッズセット二次予約受付中

2025.11.17

「神椿市建設中。VIRTUAL RELAITY」本編+グッズセットをECサイト「FINDME STORE」にて予約受付中です。

本編のダウンロードコードと、キービジュアルを使用した缶バッジ、アクリルブロック、3Dモデルデザインのステッカー、「神椿市建設中。VIRTUAL REALITY」の世界観をグラフィックデザインで施したマグカップがついた限定セットです。
✳︎本編のダウンロードコードが付属されます。
✳︎販売上限数に達し次第販売終了いたします。

【内容】
・ダウンロードコード
・缶バッジセット(全5種)
・アクリルブロック
・ステッカーセット(全5種)
・マグカップ

■本作の特徴

「神椿市建設中。VIRTUAL REALITY」は仮想世界『神椿市』で繰り広げられる物語を、VRの世界でリアルに体験できるSFダークファンタジーアドベンチャーゲームです。
登場するキャラクターは専用の3Dグラフィックとフルボイスで再現。
ゲームには神椿の所属アーティストらの人気楽曲が登場。立体感のある音楽と物語がリンクし、より一層没入感を高めます。

プレイヤーの選択によって、神椿市で紡がれる物語は大きく変化を遂げます。
物語を読み進めながら、音楽、キャラクターが調和して産み出す「神椿市」を観測し、その行方をぜひあなたの目で確かめてください。

※基本のストーリーは「神椿市建設中。REGENERATE」と共通しています。ストーリーは独立しているため、シリーズが初めての方にもお楽しみいただけます。

◼︎ゲームシステム紹介

1.『マルチエンディング』

「神椿市建設中。VIRTUAL REALITY」はいくつかの章で構成されます。
はじめは森先 化歩と出会う物語から始まります。
それぞれの章の中で出てくる選択肢によって、キャラクターのリアクションが変わり、バトルの結果によって物語の進行が変わります。
各章、全ての物語をすみずみまでお楽しみください!

2.『超ボリュームで語られる神椿市の謎』

「神椿市建設中。VIRTUAL REALITY」では、これまで各所で語られてきた「神椿市」の謎について、真相に迫るシナリオになっています。
この物語の主人公はあなた自身です。
あなたが神椿市に召喚されるところから始まるので、
KAMITSUBAKI STUDIOをこれから知る人でも物語として楽しめます。
また、KAMITSUBAKI STUDIOの楽曲や、各種コンテンツを知っている人は、
さらに楽しめる内容になっています。

3.『物語を彩るオリジナルキャラクターと豪華声優陣』

KAMITSUBAKI STUDIOのアーティストのみならず、豪華声優陣がフルボイスで物語を彩ります。

■キャスト
森先 化歩:花譜
谷置 狸眼:理芽
朝主 派流:春猿火
夜河 世界:ヰ世界情緒
輪廻 此処:幸祜

白銀 千埜:CHINO
常盤 魅優:MYU
紅谷 呐斐:NEFFY
水鏡 丹那:NINA
藍染 羅螺:RARA
裏葉 命:VITTE
天祢 亜留:存流
地邑 阿栖:明透
彩季 詩得:CIEL
らぷらす:佐倉 綾音
はすたー:富田 美憂
あぐに:阿座上 洋平
あねもす:梅田 修一朗
くーげる:藤堂 真衣
???:緑川 光

復興課長:伊藤 静
エリカ:鈴代 紗弓
谷置室長:杉田 智和

4.『3Dで再現される神椿市』

360°体験できる多数の背景を収録しています。
歌唱シーンや魔女の娘へと覚醒するシーンなど物語の重要な場面の没入感を更に高めます。

5.『多数の収録楽曲』

本作のための新曲5曲を含む、合計40曲以上の楽曲を収録しています。

■収録楽曲
【花譜】
そして花になる
痛みを
雛鳥

quiz
魔女
まほう feat.理芽
etc.

【理芽】
甘美な無法
やさしくしないで
ジュブナイル
食虫植物
etc.

【春猿火】
オオゴト
告げ口
百花繚乱
身空歌
etc.

【ヰ世界情緒】
ヰ世界の宝石譚
シリウスの心臓
ARCADIA
そして白に還る
etc.
【ヰ世界情緒】
ヰ世界の宝石譚
シリウスの心臓
ARCADIA
そして白に還る
etc.

【幸祜】
the last bullet
bliss
Abstractions Void
レイヴン・フリージア
etc.

【CIEL】
生活に落ちる

【花譜×VALIS】
神聖革命バーチャルリアリティ

【VALIS】
革命バーチャルリアリティ

【Albemuth】
新世界へ

【V.W.P】
電脳
魔女(真)
牢獄
真偽【新曲】
etc.
【Albemuth】
新世界へ

【V.W.P】
電脳
魔女(真)
牢獄
真偽【新曲】
etc.

6.『VRならではの体験』

目の前の化歩たちがあなたを目で追いかけるなど、VRならではの圧倒的実在感があります。
また、VRならではの「派流との特訓」「教会のクライミング」等のインタラクション要素もございます。
神椿市の主人公として、彼女たちと一緒に物語の謎に迫ることができます。

さらに、VRならではの巨大な怪物との「シューティングバトル」を実装。
ときにヒロインを守り、ときにヒロインとともに戦う「少年漫画の主人公」のような体験を味わうことができます



登場キャラクター紹介

森先 化歩(モリサキ カフ)
神椿市の下町「零番街」に住む、高校一年生。
不思議な歌の力を持つ、五人の『魔女の娘』の一人。
谷置 狸眼(タニオキ リメ)
神椿市のオフィス地区「壱番街」に住む魔女の娘。
高校三年生。性格は理知的でしっかり者。聡明かつ努力家だが、繊細で病みやすい。
朝主 派流(アサヌシ ハル)
神椿市の歓楽街「弐番街」に住む魔女の娘。
高校二年生。歌を支えに、日々をたくましく生きる少女。
夜河 世界(ヨルカワ セカイ)
神椿市の農園地区「参番街」に住む魔女の娘。
参番街に拠点を持つ魔女崇拝教団の「ヰ世界救済教団」の生き神的な存在。
輪廻 此処(リンネ ココ)
神椿市の科学研究特区「肆番街(しばんがい)」に住む魔女の娘。
ある事情により、過去の記憶を失っている。
白銀 千埜(シロガネ チノ)
弐番街の「歌と中華料理の店・瓦利欺」の店長。
大人びた性格で、博識かつ思慮深い。
癖の強い店員たちを、うまくまとめる。
常盤 魅優(トキワ ミユウ)
「瓦利欺」副店長。
やや気弱だが優しく、母性的な性格。
チノと共に店を切り盛りする。
紅谷 呐斐(ベニヤ ネフィ)
「瓦利欺」店員。
天真爛漫でマイペース。承認欲求は強め。
水鏡 丹那(ミカガミ ニナ)
「瓦利欺」店員。
天真爛漫で明るい性格だが、時にわがままな一面もある。
藍染 羅螺(アイゼン ララ)
「瓦利欺」店員。フロアリーダー。
性格は生真面目でストイック。固い印象だが仲間想い。
裏葉 命(ウラハ ヴィッテ)
「瓦利欺」店員。
のんびりした性格。気まぐれで猫っぽい。
天祢 亜留(アマネ アル)
魔女崇拝教団「ヰ世界救済教団」の教徒兼魔女候補。
心優しい性格。
地邑 阿栖(チムラ アス)
教団の教徒兼魔女候補にして、亜留の妹分。
元気で明るい少女。
彩季 詩得(サイキ シエル)
肆番街で出逢う少女。
神椿市の行政機関「復興課」の課員。
ジャンル 新感覚VRアドベンチャー
プレイ人数 1人
対応言語 日本語,英語,簡体字,繁体字
販売価格 本編+グッズセット:15,000円(税込)
通常版:5,100円(税込)
監督・
原作作家・
シナリオ・
世界観設計
月島 総記
開発 株式会社Gugenka